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2022.12.29
先生に聞いてみた

麻酔科医 柏木先生 vol.02 | 柏木先生が書籍をリリース!

「無痛分娩PRESS」の監修をお願いしている麻酔科医の柏木先生。2022年11月30日に新しい書籍『とれない「痛み」はない (幻冬舎新書 671)』をリリースされました。そこで今回は「そもそもどうやって書籍を出すのか?」「書籍の内容について」などざっくばらんにお話を伺いました。

柏木先生Profile

柏木 邦友(かしわぎ くにとも)先生

■麻酔科医(専門医・認定医・標榜医)

「東京マザーズクリニック」麻酔科医/「鼻のクリニック東京」麻酔科医/「アネストメディカル株式会社」代表取締役。

資格:日本麻酔科学会指導医/麻酔科標榜医/ACLS BLS NCPR ALSO取得

所属学会:日本麻酔科学会日本臨床麻酔科学会日本産婦人科学会日本周産期新生児学会日本集中治療学会日本産科麻酔学会/IARS/OAA

経歴:これまで手掛けてきた無痛分娩は延べ3,000件以上。2013年に「アネストメディカル株式会社」を設立し、関東を中心に複数の施設で産科麻酔の臨床だけでなく、安全で効果的な無痛分娩の指導やマネージメントも行っている。産科麻酔以外にも日帰り全身麻酔手術や獣麻酔監修など麻酔のプロフェッショナルとして幅広く活動している。

2004年順天堂大学医学部卒業後、2006年順天堂大学浦安病院臨床研修修了、順天堂医院、順天堂練馬病院麻酔科、聖隷浜松病院麻酔科、順天堂大学浦安病院麻酔科を経て、2014年より東京マザーズクリニック勤務

著書に

『怖くない・痛くない・つらくない 無痛分娩(PHPエディターズグループ)』

『とれない「痛み」はない』(幻冬舎新書 671)

前回のインタビューから現在までで、無痛分娩に関して変化を感じたことはありますか?

オンラインインタビュー中のスクリーンショット

interviewer:柏木先生、ご無沙汰しております。お変わりないですか?

柏木先生:ご無沙汰しております。はい!変わらず元気にやっております。

interviewer:前回のインタビューからけっこう時間が経ちましたが、無痛分娩を取り巻く環境に関して、変わってきたなと思うことはありますか?

柏木先生:そうですね。日本の無痛分娩率のデータが2022年4月頃に更新されて、それまで6%くらいだった無痛分娩率が8%に増えました。

interviewer:徐々にですが、増えてきているというデータが出てきたんですね。

柏木先生:私が見たデータだと、大学病院や総合病院などのいわゆる大病院での無痛分娩率が9%くらいまで上がり、クリニックや診療所などでの無痛分娩率が7%くらいに上がって、総合して約8%という数値になっていました。

interviewer:私も周りの人の話を聞くと、以前よりも増えてきているような印象があります。今後もこの数値が上がっていくと良いですよね。

柏木先生:そうですねぇ。例えば私は週に1回、静岡県にある『くさなぎマタニティクリニック』さんで仕事をしているのですが、静岡県だと大きい病院のあるエリアが限られているため、今後も無痛分娩率が上がっていくには個人のクリニックでの無痛分娩率が上がっていかないと難しいというのも感じています。

interviewer:たしかに!静岡県って横に長いですから、エリア的に大病院に通えないという人もいっぱいいますよね。他にもそういう都道府県はたくさんありそうです。

柏木先生:そういえば前回のインタビューからの変化といえば、私が働く病院に「無痛分娩PRESSの記事読みました」という患者さんが来てくれました。

interviewer:おぉー!それは嬉しいですね。

柏木先生:記事を事前に読んできてくれていたので、コミュニケーションがとりやすかったです。

interviewer:たしかに、患者さん側からしても柏木先生の人となりを多少わかった上で来院されるため、初対面でも接しやすいと思います。

柏木先生:私も嬉しかったですね。

interviewer:他には無痛分娩に関することで変化を感じることってありましたか?

柏木先生:あと私は『日本産科麻酔学会』にも所属しておりまして、詳しくは話せないのですが、この学会の方でも、安全な無痛分娩を普及するための取り組みについて、これまで以上に具体的に様々な話し合いが行われています。

interviewer:なるほど、水面下でも安全な無痛分娩を広めるための様々な動きがあるんですね。何か大きな動きを期待してしまいますね。

柏木先生:あくまで私の個人的な未来予想ですが、将来的に「産科麻酔専門医」みたいなものが出てくるのではないかと睨んでいます。

interviewer:ほう。産科で扱う麻酔に関してのプロフェッショナルということですね。

柏木先生:そうですね。いつそのような制度が施行されるのかは全く予想がつきませんが。

interviewer:無痛分娩を取り巻く環境に関して、この他に現場で感じる変化はありますか?

柏木先生:今もまだコロナ禍という状況は変わっておりませんが、このコロナ禍という状況においても無痛分娩を希望される妊婦さんは増えていると感じます。

interviewer:そうなんですね!

柏木先生:無痛分娩は分娩時に叫んだりすることがないので、飛沫感染対策にもなるというメリットがあります。

interviewer:たしかに!「痛い!」って叫びまくるとそれだけ分娩スタッフに感染する確率は上がりますもんね。

柏木先生:はい。飛沫が心配だからと言って、分娩中の妊婦さんにマスクをお願いするのも現実的に難しいですし。

interviewer:分娩時ってただでさえ呼吸が苦しいのに、そこにマスクはさせられないですよね。酸欠になっちゃいそうです。

柏木先生:そうなんです。ですので私も「無痛分娩はコロナ対策としてもいいな」というのは感じていますね。

interviewer:あとコロナ禍で無痛分娩された方にインタビューをした際に「コロナ禍で家族の立ち会いができないから、無痛分娩を選びました」という方も何名かいらっしゃいました。

柏木先生:たしかに!そうですよね。分娩時に家族の支えがなければ、自分で頑張るしかないですもんね。

書籍の出版について

オンラインインタビュー中のスクリーンショット

interviewer:2022年11月30日に幻冬舎新書『とれない「痛み」はない』が出版されましたが、そもそも出版ってどういう流れで本を出すことになるのでしょうか?出版社から依頼が来たということでしょうか?

柏木先生:出版社からの依頼で執筆するケースもありますが、今回は私の方から出版社に「こういう本が書きたい」という提案をしました。

interviewer:そういう方法で出版に至ることもあるんですね!

柏木先生:書きたい本の内容や構想をまとめた企画書みたいなものをつくりまして、それを幻冬舎さんに送りました。もちろん窓口対応していただいた編集者の方には口頭で説明もさせていただいてます。

interviewer:へー!そうなんですね。そんなやり方があるなんて知らなかったなぁ。

柏木先生:これで企画にOKが出れば、執筆作業がはじまるという流れです。

interviewer:実際に今回の『とれない「痛み」はない』の執筆にはどれくらいの期間がかかりましたか?

柏木先生:だいたい半年ぐらいかかりました。

interviewer:やはりそれぐらいかかるんですね。しかも柏木先生は麻酔医としての仕事も抱えながらの執筆ですから、いつもに増して忙しかったのが想像できます。

柏木先生:ちなみに書籍のタイトルに関しては幻冬舎さんに考えてもらいました。

interviewer:タイトルは売上を左右すると言いますし、書籍のタイトルの付け方に関して、出版社はプロですからね。なるほどなぁ。

柏木先生:あと、今回の書籍はAmazonオーディブルで聴くことができるようになります。

interviewer:Amazonオーディブル?

柏木先生:書籍に書かれている内容を音声で読み上げてくれるサービスです。一言で表すなら「耳で聞く本」です。

interviewer:あぁ!そういうサービスがあるというのは聞いたことがあります。実際にサービスを利用したことはありませんが。

柏木先生:現代って本を読む人が減ってきていると言われているのですが、これなら車の運転中に聞いたり、何か作業しながら音声で内容を知ることができるため、ラクなんですよ。

interviewer:たしかに忙しい現代人向けって感じがします。

柏木先生:Amazonオーディブルは1.5〜2倍速でも聴くことができますので、忙しい人向けに良いと思います。

interviewer:今の若い人って動画でも2倍速で見るのが普通というのを聞いたことがあります。それのオーディオ版なんですね。

柏木先生:はい。さらに『とれない「痛み」はない』オーディブル版だと「私がどんな人間なのか?」など私が色々とお話させていただいく音声データも聞くことができます。これは書籍版にはない特典です。

interviewer:オーディブル版ならではの特典みたいな感じですね。

柏木先生:ちなみにオーディブル版はまだ発売されておらず、2023年2月あたりにリリースされる予定です。

新著『とれない「痛み」はない』の内容

オンラインインタビュー中のスクリーンショット

interviewer:私はまだ全部は読めていないのですが「無痛分娩」に関する章がありましたので、そこだけは最優先で読ませていただきました。

柏木先生:ありがとうございます。今回の書籍は「痛み」という大きなテーマで書かせていただいたのですが「無痛分娩」に関する内容も絶対に入れたかったので、1つの章を使って「無痛分娩」を取り上げました。

interviewer:例えば「人間は二足歩行によって手を使えるようになったことと引き換えに、難産にならざるを得なかった」など、そもそもなぜ人間の出産は大変なのかといったところから掘り下げているのが興味深かったです。

柏木先生:ありがとうございます。

interviewer:あと私がビックリした内容としましては、日本でも「出産の痛みに耐えてこそ母親」という風潮がありますが、170年ほど前は欧米でもキリスト教の教えで「分娩の痛みはとってはいけないもの」と考えられていたという部分ですね。

柏木先生:そうなんですよ。日本と欧米で背景は違いますが、同じような風潮はあったんですよね。

interviewer:現代の日本で「出産の痛みに耐えてこそ母親」という風潮があるのも、ある意味通過儀礼のような印象も受けます。基本的に新しく無痛分娩が入ってきた時には反対派が多数いるというのはどこの国でも当たり前のことなのかもしれませんね。

柏木先生:そうですね。

interviewer:欧米で麻酔を使った分娩が普及するきっかけとなったのは、1853年にヴィクトリア女王がクロロホルム麻酔を使った無痛分娩で出産したのがきっかけと書かれておりましたが、日本でも公的な立場の女性が無痛分娩による出産をすることがあれば、一気に無痛分娩の普及が進みそうな気がします。

柏木先生:きちんと読んでマーカーまで引いていただいてありがとうございます(笑)。

interviewer:『とれない「痛み」はない』は、痛みという大きなテーマで書かれていますが、麻酔科医という「痛みの専門家」である柏木先生が「痛みを我慢するのは良くない」という内容を根拠と共に書いてくれているのが非常に大きいと感じました。

柏木先生:そうですね。無痛分娩に限らず日本人には「痛みを我慢する」美徳というものが息づいていますので、そこに関してはキッチリと述べておかないといけないと思いました。

interviewer:私も普段意識していませんが、潜在意識の中に「痛みを我慢する」という癖が残っているような気がします。

柏木先生:日本人は多かれ少なかれあると思います。ただ、書籍の中でも述べているように痛みを放置しておくと悪化するケースが多々ありますので「痛みは我慢せずに適切に対処することが大切」というのが伝われば嬉しいなと思います。

interviewer:あと無痛分娩とは関係ないですが、緩和ケアについて書かれていた内容も驚きでした。緩和ケアって、ガンの末期などもう尽くせる手がなくなってから行うイメージがあったのですが、初期から適切に緩和ケアをすることで生存率にも影響してくるというのは知らない人の方が圧倒的に多いと思います。

柏木先生:たしかにガンの場合、末期になってから緩和ケアというイメージをお持ちの方は多いと思いますが、実際には緩和ケアってどのタイミングではじめても大丈夫なんです。例えばガンの場合、末期でなくても医師からガンと判断された時点で何らかの痛みを持っている方が多いんですよ。

interviewer:ガンで亡くなったうちの父もそうでした。最初にガンだと診断された時点ではそこまでではないものの痛みはあったみたいで。緩和ケアみたいなことをやりはじめたのは亡くなる少し手前ぐらいだったように記憶しています。

柏木先生:そういうケースが多いですよね。

interviewer:治療しながら緩和ケアもしたい場合って、どうすれば良いのでしょうか?

柏木先生:かかっている先生に言えば対処してくれると思います。その病院に緩和ケア専門の科があれば、合わせて受診することもできますし、もしかかっている病院に緩和ケアがなくても、他の病院と医療連携することも可能です。

interviewer:意外と選択肢はあるんですね。我々が知らないだけなんですね。

柏木先生:そうです。もし痛みや病気の症状の関係で家を出るのもつらいということになれば、訪問診療の中にペインクリニックの緩和ケアをしてくれるところもあります。

interviewer:思いのほか自由度が高い!

柏木先生:緩和ケアって大きな機械や設備が必要なわけではありませんので、色んな手段がとれるんですよ。例えばご自宅で点滴やご自身やご家族が注射するという方法もあります。また、インターネットで調べれば緩和ケアをやっている医療機関が出てきますので、そこに相談するという手もあります。

interviewer:なるほど!緩和ケアを受けたいと思ったら、まずはかかっている病院に相談する、それでダメだったらネットで調べると良いんですね。話題が無痛分娩から脱線してしまいましたが、貴重な情報を知ることができました。

柏木先生:こちらこそ読んでいただいてありがとうございます。

interviewer:では最後に柏木先生の新著『とれない「痛み」はない』を「無痛分娩PRESS」の読者の方へ紹介していただけますか?

柏木先生:出産の時って、お産(分娩時)の痛みのことだけ考えてしまいがちです。もちろん陣痛などお産はすごく痛いのですが、周産期にはそれ以外にも様々な痛みがあります。例えば出産に関連して腰痛になることもありますし、産後に頭痛に悩まされる方もいます。あとは乳腺炎であったり、会陰部の切開の痛みであったり、けっこう色々な痛みが発生するんですよ。

interviewer:そういえばたしかに!

柏木先生:無痛分娩を選べば、分娩時の痛みは硬膜外麻酔などで取ることができます。しかし、それ以外の痛みにどう対処して良いかというのは、あまり語られていないんですよ。

interviewer:分娩時の痛みのインパクトが大きすぎるんでしょうね。

柏木先生:『とれない「痛み」はない』は、痛み全般について言及していますので、例えば「どうしてロキソニンは効くのか?」「どうしてカロナールは効くのか?」「ロキソニンとカロナールは一緒に飲んでも大丈夫なのか?」などについても書かれています。

interviewer:たしかに痛み止め薬のことって詳しくわからないです。

柏木先生:この他に周産期で関わる痛みについても書かれています。産中だけでなく、産後の痛みに対しても役に立つ情報が書かれていますので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

interviewer:緩和ケアの話など「痛み」全般について書かれている本ですので、自分の気になる部分を読んだら、ご両親などご家族に本をシェアしてもらうといった使い方も良さそうですね。

柏木先生:はい。

interviewer:柏木先生、本日はお忙しい中、ありがとうございました!また折を見てインタビューさせてください!

柏木先生の新著『とれない「痛み」はない』情報

■タイトル:『とれない「痛み」はない』

■著者:柏木 邦友 Kashiwagi Kunitomo

■発売日:2022年11月30日

■出版社:幻冬舎

【書籍紹介】

人の身体は50歳を過ぎると、あちこちに痛みが出てくるもの。日本人は「我慢は美徳」とばかりに耐えようとするが、痛みは生活の質を落とすだけでなく、我慢するほどに強まる仕組みになっているから無意味だ。痛みは深刻な病気のサインのこともあるため、放っておくのは禁物である。そこで本書では、痛みが生じるそもそもの仕組みから、部位別の痛みのとり方、薬や病院の選び方、終末期の苦しみのとり除き方まで、痛みに関するあらゆる疑問を解説。痛みや苦しみの恐怖から解放されること間違いなしの一冊。

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