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2022.03.30
体験談

カリフォルニア 助産師・Oさん 選んで良かった!と思えた無痛分娩

助産師をされているOさん。1人目は帝王切開、2人目は経膣分娩。3人目は助産師としていろんなお産を経験したいという好奇心もあり無痛分娩を選択されたそうです。

【基本data】

■name/Oさん

■年齢/34

■お住まいのエリア/カリフォルニア・セントラル・バレー

■家族構成/夫+妻+子ども(3名)

■出産施設/Clovis Community Medical Center

■無痛分娩回数/1回

■出産費用総額/[病院の施設費(分娩1泊2日分)$22415+無痛の麻酔科の処置代$7515+かかりつけの産婦人科医代$2250] 合計$32180→保険適用後$1541

※妊娠中の健診検査代、産後の健診代は別途。これらも含めると保険適応後およそ合計$3000

■無痛分娩実施時期/2021年

取材時期:2022年2月

2人目のお産で子宮内反を起こしオペと輸血を経験。

Oさん提供写真

interviewer:無痛分娩で出産されたのは何人目のお子さんですか?

Oさん:3人目です。

interviewer:上の2人のお子さんの時は、どんなお産だったのでしょうか。

Oさん:1人目はオハイオ州で出産して、2人目と3人目をカリフォルニア州で出産しました。1人目は逆子だったので、外回転術(妊婦さんのお腹の外から、赤ちゃんを回転して逆子を戻す処置)を試したのですが治らなかったんです。なので帝王切開でのお産になりました。

interviewer:外回転術という施術があるんですね。

Oさん:はい。日本ではあまりやらないと思いますが、アメリカでは一般的だと聞いて試してみました。

interviewer:2人目はどのような感じでしたか?

Oさん:2人目は普通分娩でした。帝王切開後に経膣分娩することを、アメリカでは「ブイバック」と言います。日本だと一度帝王切開した後に経膣分娩できる病院は少ないんじゃないかと思いますが、アメリカの病院では「6回帝王切開したとしても、経膣分娩できます」と言われたのでトライしてみることにしました。

interviewer:確かに日本だと、一度帝王切開すると次も帝王切開になるというイメージです。1人目は帝王切開、2人目は経膣分娩とそれぞれ違うお産スタイルを選択されたんですね。

Oさん:はい。ただ、子宮内反と言って胎盤が出る時に子宮が裏返ってしまうということが稀にあるのですが、それが起きてしまったんです。2リットル近く出血をして輸血することになり、大変なお産となりました。そういうこともあって、3人目は無痛分娩にしてみようと思ったんです。

interviewer:2人目のお子さんの時の大変な経験があって、今度は無痛分娩にしてみようと思ったんですね。

Oさん:はい。それに加えて、助産師として「いろんなお産を体験してみたい」という純粋な好奇心もありました。1人目は帝王切開、2人目はブイバックに子宮内反と輸血。そしたら次は無痛分娩かなと。

interviewer:なるほど。それはさすが、助産師さんという職業ならではの考えですね!

Oさん:はい、そんな感じで無痛分娩を選びました。

interviewer:無痛分娩をする病院はどういう基準で選びましたか?

Oさん:アメリカでは無痛分娩はどこの病院でもやっているので、2人目を取り上げてもらった先生がいるところにしました。新しい先生にお願いするより、前回のお産を把握してくれている先生にお願いした方が安心だと思いお世話になることにしました。

無痛分娩をした病院/Oさん提供写真

実際に体験してみて感じた「無痛分娩のメリット」

Oさん提供写真

interviewer:実際に無痛分娩をしてみて、事前に想像していたことと違った点はありましたか?

Oさん:日本で無痛分娩というと「愛着形成に影響があるのでは?」「赤ちゃんにとってリスクが高いのでは?」などと言われることもあり、あまりポジティブに捉えられない傾向があるのかなと思うんです。実際に経験してみたらそんなことは全くなくて、無痛分娩でも上の2人の子どもの時と同じようにしっかり愛着形成できたと思います。私はむしろ痛みがなくて冷静にお産に向き合えたことで「ちゃんと自分で産んだ」と強く感じることができました。お産の後も母子共にとても元気でした。

interviewer:上の2人のお子さんの時は、痛みであまり余裕はなかったという感じでしょうか。

Oさん:そうですね。1人目は帝王切開後の傷が痛くて歩けなかったですし、2人目は子宮内反になってしまってとても痛くて。お産の後にオペ室に運ばれて輸血したりと大変でしたからね。なので3人目の無痛分娩でのお産が私の中では一番だと感じました。

interviewer:入院はいつされましたか?

Oさん:陣痛がくる前に入院しました。

interviewer:事前に入院されたんですね。麻酔はどのタイミングで打ちましたか?

Oさん:子宮口が約5cm開いたら麻酔を打つという話だったのですが、陣痛が弱くてなかなか子宮口が開かなかったんです。破膜(内診時に内子宮口から赤ちゃんを包んでいる卵膜を破る処置のこと)によって破水させて、そこから急激に陣痛が強まりお産が進みました。麻酔を入れてもらった時にはもう痛みがMAXでした。なので、無痛分娩でしたが結果的には陣痛もしっかりと感じることになりました。

interviewer:麻酔を打った後は陣痛の痛みは緩和されましたか?

Oさん:はい、痛みは無くなりました。全く感じませんでしたね。

interviewer:生まれるまでにどれぐらい時間がかかりましたか?

Oさん:記録ではトータルで6時間になっていますが、本陣痛がきたのは破水してからで、そこから30分以内に産まれました。

interviewer:すごく早いですね。

Oさん:早かったですね。

interviewer:麻酔が切れてからの痛みはどのような感じでしたか?

Oさん:全然痛くなかったです。

interviewer:お腹が張る感覚や、赤ちゃんが産まれてくる感覚みたいなものはありましたか?

Oさん:はい、それはありました。上の2人の子どものお産の時と同じように、お尻が押されるような感じが分かりましたね。その感覚を感じたのでナースコールを押して看護師さんに内診してもらったら、やはりお産が進み始めていました。

interviewer:分娩が終わってからの流れについて、日本と違いはありますか?

Oさん:大体同じだと思います。私たちはお産をしたお部屋で丸一日過ごしました。日本だとそういうお部屋のことをLDR(Labor Delivery Recoveryの略。陣痛の始まりから、出産、出産後まで過ごすことができるお部屋のこと)と呼んだりします。ただ、これは私たちのケースで、産後はMother baby unitに部屋(病棟)が変わるという人も多いです。

interviewer:無痛分娩をやってみて、Oさんが良かったなと思う点を教えてください。

Oさん:お産直後から、すぐに子どもがかわいいと思える余裕を持てたのがよかったです。「これなら4人目もすぐに産める。」と思えるぐらい、お産に対して充実感もありました。

interviewer:満足のいくお産だったのですね。出産直後でも心身共に余裕があったことが伝わります。

Oさん:体力も残っていて、すぐに育児にかかれるというのもよかったです。

interviewer:なるほど、上のお子さんのお世話もありますからね。ちなみに上のお子さん2人は、お産の時にはどこにいらしたんですか?

Oさん:自宅で待っていました。立ち会いを希望していたのですが、コロナによって子どもの立ち合いはできなかったんです。

interviewer:そうだったんですね。無痛分娩について、もっとこうしておけばよかったと思ったことがありましたら教えてください。

Oさん:麻酔をもう少し早く入れてもらえばよかったなとは思います。

interviewer:麻酔を入れるタイミングは、お願いすれば変更してもらえるのですか?

Oさん:最終的には先生の判断次第ですが、交渉は可能だと思います。破水してからの陣痛がかなり痛かったので、もう少し早く麻酔を入れていたら痛みをほとんど感じることなくお産ができたかもしれないと思いました。ですが、これは「あえて言うなら」という感じです。私にとって無痛分娩は良いことばかりでした。

interviewer:上の2人のお子さんの時と比べて、お産の後の疲れ具合に違いは感じましたか?

Oさん:全然違いましたね。私も赤ちゃんもとても元気でした。体力が残っていたからか、母乳もよく出たと感じましたね。帰宅後すぐに普通に家事ができたぐらいです。実は無痛分娩をする前は、「赤ちゃんに悪影響はないのかな?」と麻酔について少し不安に思っていた点もあったんです。でも実際に経験してみて、麻酔も先生にしっかり管理してもらった上で正しく使えば、赤ちゃんの元気がなくなるようなこともないと分かりました。無痛分娩をみんなにオススメしたいと思うくらい良いお産でした。

interviewer:実際に誰かに無痛分娩をオススメする際にはどういうことをお話しされていますか?

Oさん:「全然痛みを感じなくて余裕が生まれる分『自分が産んだ』と最大限感じることができるよ」と言ってます。陣痛の痛みが辛いと、それだけでいっぱいいっぱいになってしまうじゃないですか。でも無痛分娩なら、落ち着いていられる分、赤ちゃんに集中することができて「あ、今頭がこのくらい出てきている」とか、「お尻にこのくらいの圧がかかっているから、だいたいこのくらい出てきてるんだろうな」っていうのをなんとなく想像できたんです。生まれるまでずっと赤ちゃんと一体になっている感じです。3回のお産経験の中で一番「赤ちゃんと2人で頑張った」と感じたお産でした。

interviewer:ここはデメリットだなと思うことはありましたか?

Oさん:私はなかったですね。でも人によっては麻酔を打った箇所がしばらく痛むとおっしゃる方もいます。約半年間も痛むという方もいると聞きました。他には、麻酔を打ったら嘔吐してしまったという話しも話も聞くので、お薬が合わないと大変だなと思いました。

日本とアメリカのお産事情の違い

Oさん提供写真

interviewer:Oさんはご自身も助産師をされているということで、日本とアメリカの違いで驚いたことはありますか?

Oさん:はい、日本とアメリカの違いに最初はとても混乱しました。まず入院日数が短くてびっくりしましたね。アメリカでは普通のお産の場合は翌日退院、帝王切開でも出産後2日で退院です。私は2人目のお産の時にオペもして輸血もしたとお話ししましたが、それでも出産後2日で退院でした。

interviewer:2リットルの出血ですものね!そんな状態でも2日で退院なんですね。驚きです。

Oさん:貧血がかなりあったのですが、それでも退院という感じでした。びっくりしましたね。そういったことから、もしかしたらアメリカで無痛分娩を選択する方が多い1つの理由として、体力を温存したいというのも大きいんじゃないかなと思いました。産後は病院でゆっくりと休む暇がなく退院してすぐに育児が始まるので。

interviewer:翌日に退院ですと、日本のように入院中に沐浴の仕方や授乳の仕方を教えてもらう時間はないということでしょうか。

Oさん:はい、退院後に民間のサービスを利用して家に来てもらう感じです。

interviewer:日本でいう「たまごクラブ」のような育児雑誌はありますか?

Oさん:そういう雑誌は本屋さんでもあまり見かけないですね。教科書みたいなものを病院でいただくんですけど、文字ばかりで読みやすいとは言えません(笑)。内容としては「 子宮の変化について」や「食べてはいけない物」など、書いてあることは日本とだいたい一緒という印象です。

病院でもらったという育児書/Oさん提供写真

interviewer:健診内容に違いはありますか?

Oさん:日本では健診と一緒にエコーや採血もしますが、アメリカではやりません。採血は採血専門の場所を自分で予約して、結果のデータがお産予定の病院に送られるシステムになっています。エコーも同様です。それから診の回数が日本と比べて格段に少ないです。日本では早いと妊娠5週目から診てもらえて、そこから2週間おきに健診がありますが、アメリカでは9週くらいにならないと見てもらえません。さらに健診の間隔は最初から4週間に1回です。エコーも妊娠中に2回しかありません。

interviewer:日本だとエコーは健診の度に見ますよね。そんなに違いがあるんですね。

Oさん:そうなんです。

interviewer:処方されるお薬も違うのでしょうか?

Oさん:日本では妊娠初期で出血があると、止血剤や子宮収縮抑制剤を処方されて安静にするように言われますよね。アメリカでは妊娠初期の出血に対して薬は処方されません。それにびっくりしましたね。それと同じで、切迫早産についても日本では薬を内服したり点滴を打ったり、場合によっては入院すると思うんですが。アメリカでは妊娠22週を過ぎて切迫早産で陣痛が来てしまった場合でも「マグセント」という強いお薬を1本打つだけです。48時間様子を見て、それでダメだったらもうそれまでと言われました。それ以上出産のタイミングを薬で引き延ばすことはしないんです。

マグセント https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00059792

interviewer:日本ではなるべく生産期まではお腹の中に赤ちゃんを留めておこうとする処置が一般的なので、それは大きな違いですね。

Oさん:そうなんです。

interviewer:産科専門のクリニックはアメリカにもありますか?

Oさん:健診だけをするクリニックはたくさんありますが、お産をする病院は別になります。

interviewer:健診はクリニックで受けて、お産は大きな病院でするのが一般的なんですね。日本でいう総合病院のような感じでしょうか。

Oさん:そうです。お産をするのは分娩室があってNICUがついている病院です。

interviewer:アメリカでは、お産をする病院の選び方はどんな感じになるのでしょうか。

Oさん:日本と大きく違うのは、加入している保険によって選べる病院が決まっているという”こともある”んです。かかっていた産科医が提携している病院で決まってしまうこともあります。保険のネットワーク外の病院と提携してる場合は保険がきかないため、自分の保険と提携している先生のところに変えなければいけない事もあるそうです。

interviewer:複雑そうですね。保険によってお産できる病院が変わってくるんですね。

Oさん:はい、どこのクリニックでも、まず希望の出産方法を聞いて、それにマッチする先生を決めていく感じです。無痛分娩がいいのか、帝王切開がいいのか、普通分娩がいいのかといった感じですね。先生が、先ほどお話ししたお産ができる大きい病院みたいな所と提携していて、お産の時にはその病院に自分が入院するんです。

interviewer:なるほど。お産をする病院を選ぶのではなく、お産のスタイルから先生を決めると病院も決まってくるという感じなのですね。

Oさん:そうですね。

interviewer:では最後に、無痛分娩を検討されている方に向けてメッセージをお願いいたします。

Oさん:「無痛分娩するのってどうなの?」というようなネガティブなことを言われてしまうこともあるかもしれませんが、自分で選択したことに自信を持って、出産・育児に専念してください。

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