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2024.02.28
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【後編】「助産師さんの仕事内容って何?」現役助産師さんに聞いてみました。

妊娠、出産では必ずと言っていいほどお世話になる助産師さん。でも看護師さんとの違いや、実際にどんな仕事なのかは、あまり知られていません。今回は、以前に無痛分娩の体験談を伺った助産師のLさんに、具体的な仕事内容、無痛分娩の現場のことなどをお伺いしました。

前編はこちら

【前編】「助産師さんの仕事内容って何?」現役助産師さんに聞いてみました。

LさんのProfile

Lさん(無痛分娩の体験談はこちら

病院の産科病棟で3年間助産師として働き、その後、英語を勉強したいと1年間オーストラリアに留学。帰国後は語学を活かして外国人の患者が多い都内病院の産科で8年半働く。その間、プライベートではフランス人と国際結婚し、男の子3人を出産。現在は、フリーランス助産師として「外国人向けの出張助産所」や「助産師さん向けの英語コーチ」などこれまでの経験を活かして、多方面で活動。

助産師から見た無痛分娩の現場。

interviewer:自然分娩と無痛分娩を比べて、助産師など現場で働く人たちの負担に違いはありますか。

Lさん:そうですね、自然分娩は基本的にベッド上で過ごすので、マッサージとかスクワットに付き添うとか、助産師の身体的な負担があります。無痛分娩ではそういう身体的負担は少ない代わりに「判断しなければならないポイント」が多いので、難易度は高いと思います。

interviewer:具体的には、どういう判断なんですか。

Lさん:麻酔を背中から入れるので、その処置自体に伴う合併症を引き起こす可能性があります。麻酔薬の効果だけでなく、副作用が出ていないかなど観察が必要です。もちろん医師もいるんですけど、麻酔の管が正しいところに入っていなかった場合、妊婦さんの呼吸が苦しくなったり、血圧がガクンと下がったり、そんな心配もあります。それを早く見極めて対処しなければいけないんです。

interviewer:なるほど。何か問題が起きても、それが出産によるものか、麻酔のせいなのか、妊婦さんもよくわからないですからね。だから助産師は先読みで状況を見ながらの判断が必要なんですね。

Lさん:そうです。自分の目だけでなく、定期的に血圧を測って、モニターを使って客観的な判断もします。この麻酔に関わることは、自然分娩にはないことだから、当然緊張感は伴いますね。

interviewer:確かに無痛分娩をする時って「モニターに繋がれる」みたいなことをみなさん言っていて、そこに疑問を持っていなかったんですけど、そういう判断のためなんですね。

Lさん:そう、何が起こるか分からないので。

interviewer:妊婦さんは無痛ということで、リラックス状態で臨んでいるかもしれないけれど、その穏やかな状態を保つために、医師や助産師などスタッフは神経を張り詰めて状況を見ているんですね。

Lさん:そう思いますね。最初のステージは、麻酔の管がまずしっかり背中に入ったかどうかなんですが、その後も麻酔を使った時にしっかり効くかどうかがわからない。逆に効きすぎて、妊婦さんの呼吸が苦しくなったり、お産が全然進まなくなったり、そういう可能性もあるから、やっぱり生まれるまでは安心できなくて。でも生まれてからも安心はできないですけどね。

interviewer:そうですよね。「麻酔が切れた途端にちょっと…」というお話も聞いたことがあります。

Lさん:本当にそうなんです。

病院で働く助産師の勤務形態はどうなっていますか?

interviewer:出産に関わる仕事は、現場を離れられない状況が長く続くこともあったりして、例えば病院勤めの助産師だと、いわゆるアルバイトのように「10時から17時まで勤務」みたいな時間の切り方が難しいような気がします。実際にはどういう勤務形態なんでしょうか。

Lさん:アルバイトとして仕事をしている人はいます。「昼間のこの時間帯だけ来てね」って言われて行っている人とか、夜勤だけのアルバイトをしている人も結構います。でもアルバイトとはいえ、事前に無通分娩の知識とか、技術を得た上で仕事をしている人たちです。勤務時間帯が終わったら、きちんと別のスタッフに引き継ぐ形になっていると思います。

interviewer:では「本当はこの時間で終わるはずだったけど(出産の状況によって)1〜2時間残業しないと」っていうことはあまりないんですか。

Lさん:あぁ、それはありますね。施設にもよるし、妊婦さんとの関わりにもよるかもしれないですが。勤務時間ぴったりには終われず「あとちょっとで生まれそうだから、お手伝いしていくね」と言って残る人もいます。

interviewer:なるほど、やっぱりあるんですね。

Lさん:病院やクリニックだったら、24時間ずっと付きっきりというのはないです。どこかでスタッフが交代します。

interviewer:出産に立ち合うスタッフの休息も大切ですからね。

フリーランスの助産師ってどんな働き方をしているのですか?

Closeup of hands on clock face

interviewer:フリーランスの助産師は、Lさんに限らず一般的にどういう感じで働いているんでしょうか。

Lさん:助産師独自の職能団体として「日本助産師会」があって、そこから各都道府県の助産師会に分かれています。フリーランスの人は助産師会に所属して、そのつながりで依頼を受ける人が結構いるのではないかと思います。

interviewer:依頼は「あそこの病院でこういう人が必要だから行ける?」みたいな感じですか。

Lさん:病院となると、フリーランスの助産師の場合、アルバイトなどの形で個人契約して時々行く人が多いのですが、助産師会のつながりだったら、例えば「地域の母親学級」をするとか「小学校の性教育授業」に出向くとか、少し病院とは離れた活動が多いと思います。

interviewer:助産師の仕事で、性教育までカバーするっていうのは意外というか、全く予想していなかったです。

Lさん:そうですね。

interviewer:フリーランスの助産師の働き方としては、結構自由で働きやすいですか?

Lさん:はい。どれだけ働きたいかは自分で決められるから、かなり自由に働けるとは思います。

interviewer:では、自分の空き時間に合わせてたくさん依頼を受けたり、逆に子育てで忙しいからセーブしたりできるということですね。

Lさん:そう思います。ただ病院で働いている時ほどの安定した収入がないから、働いた分だけ、何かしないと収入は得られないっていう感じになりますね。そのあたりの不安定さは感じると思います。

interviewer:産婦人科のホームページでスタッフ募集を見ると、助産師って結構お給料が高いなと思いましたが。

Lさん:そう、夜勤があるから高いのかなとは思います。

interviewer:確かに、その募集でも「夜勤手当込み」と記載がありました。そうなると体力的にも過酷で大変ですよね。

Lさん:その通りなんです。

助産師を取り巻く環境について思うこと。

backgrounds night sky with stars and moon and clouds.

interviewer:「こう変わればいいのに」とか「こんな制度があればいいのに」など日本の助産師を取り巻く環境について思うことはありますか? 

Lさん:先ほど夜勤の話がありましたが、病院やクリニックでは本当に過酷な労働環境で働く人がたくさんいます。でもみんな仕事が大好きで、すごくやりがいを持って働いているんです。そうやって使命感に燃えて働き続けるけれど、体調を崩しがちだったり、過去には「この働き方は、おかしい」っていうことすら、気づいてない人も結構いたりして。

interviewer:なるほど。でもそうなるのも分かる気がします。 

Lさん:所属して頑張る使命感ですよね。あとは産育休や時短勤務で少し弱い立場になってしまって、雇う側の言いなりにならざるを得ないところもあります。例えば、勤務するクリニックが家から近いと「あ、ちょっと今日早めに来てくれる?」みたいな。もちろんお給料はもらえるんですけど、子どもがいても「残業でこれだけはやって」とか休みの日が結局勤務になるとか、そういう人が結構多くて。 

Lさん:「やりたい」っていう気持ちで、すごく楽しく続けているのはいいと思うんです。でも弱い立場の人たちは、おそらく収入が途絶えるのが困るからそこにいるわけで、働き方が自由に選べたり、過酷な働き方はやめても収入が保証されたり、得意なことで収入を得たり、引け目を感じずに子育てと両立できたり、そういうふうになればいいなと思っています。 

interviewer:そういう現状で、フリーランス助産師の集まり(組合)みたいなものは、今できているのですか?

Lさん:少しずつ増えていると思います。地域ごとだけでなく、SNSでもオンラインサロンみたいな感じであったりしますね。私はどこにも所属していないですが、今は選べる時代だから「活動の場は病院以外にもある」と声を大にして言いたい助産師、看護師はいっぱいいると思います。 

interviewer:なるほど。

助産師から見た“いい病院”のポイントは?

interviewer:助産師の視点で「いい病院とそうではない病院」の見極め方のポイントがあれば教えてください。 

Lさん:妊婦さんの立場で外から見ただけでは、正直分からないですよね。妊婦さんに対しては、ホスピタリティ(おもてなしの心)があふれる食事とかエステとかそういうことを謳っている病院が多い気がします。でも重要なのは、どれだけスタッフ、つまり「働く側に優しいか」だと思っています。 

interviewer:それは本当に感じます。結局スタッフが少しゆとりを持った状態で働けていないと、いざ何かあった時にきちんと動けないと思うんですよ。緊急事態以外の時でも、常にスタッフに余裕がないという病院は、経営体制も含めてあんまり良くないのかもしれないですね。 

Lさん:たぶんスタッフが十分足りているところは、ほぼないとは思うんです。その中でも看護師、助産師は特に手がいっぱいで、スタッフ自身の満足度が低い職場環境だとパフォーマンスにも影響します。ということは、患者さんにいいケアができないってことに。 

interviewer:そうですよね。でも、日本のいろんな職場に言える状況でもありますね。 

Lさん:実は外からでは分からなくて、一度「内部の人」にならないと見えてこないということはあると思います。

印象に残るお産のエピソード。

Portrait of the young pregnant woman by the window

interviewer:これまで助産師として関わった出産の中で、印象深いエピソードがあれば教えてください。

Lさん:思い浮かぶエピソードが1つあります。日本語を話さない外国の方のお産だったんですけど、その方は日本に来たばかりで、言葉も文化も何にもわからない状態。妊娠中から英語は話してくれたので、母親学級では関わっていたんです。いよいよという時期に入院したんですが、2日がかりで。

interviewer:それは大変ですね。

Lさん:でもその方が「自分で産んだ、自分で頑張れた」という心からの達成感を味わえたお産になって。あくまで黒子としての助産師ですが、そういうお産を付きっきりでサポートするのはうれしいことなので、一番印象に残っています。

interviewer:国はどちらの方ですか?

Lさん:インドの方でした。

interviewer:確かに、いきなり知らない国でお産ってめちゃくちゃ不安ですよね。例えば歯を抜くぐらいのことでも、外国の病院でやるとなると「ちょっと大丈夫かな」って不安な気持ちになりますよね。

Lさん:確かに怖い…。

interviewer:そのインドの方は、2日がかりって相当難産だとは思うんですけど、無事に出産できたってことですよね。

Lさん:そうです。継続して深く関わることで、相手も心を開いてくれて、妊婦さん自身の達成感、満足感が高い出産につながったんじゃないかなと思います。やはり何度も顔を合わせるスタッフがいるとか、話したことがあるスタッフがいるのは、患者さんにとってはすごく安心なんだと思いました。

interviewer:確かに過去にインタビューをした方で、無痛分娩をされた方なんですけど、毎回来るスタッフが変わったから、関係性を築けなくてそこが不満足だったという話を聞いたことがあります。

Lさん:確かに、それはあると思います。

「助産師向けの英語コーチ」について教えてください。

English concept with notebook on wooden desk

interviewer:「助産師向けの英語コーチ」をされていますが、皆さんどんなきっかけで受講されるのでしょうか。

Lさん:助産師をしていて「英語しか話せない人が来た、どうしよう」というプチストレスを長年抱えていた人や、英語が話せなくてもどかしい、患者さんに申し訳ないって思っているような人が受講されますね。

interviewer:「自分のレベルを上げたい」という感じですか。

Lさん:そうです。それによって収入がアップするわけではないけれど、英語で対応できることは大きい強みになって、一生使えるものなので。

interviewer:確かにそうですね。でもそれなら本来、病院・クリニック側がスタッフ教育や研修の一貫として依頼しても良い気がしますね。

Lさん:そうなんです。今は個別で1人1人に対して手厚くやっているんですけど、考えてみれば、クリニックや病院の産科と提携しちゃった方が、もっとみんなに英語を話してもらえますよね。だから今後はそこをやっていきたいと思っています。

interviewer:まず1つ事例を作れば、実現していきそうですね。助産師だけでなく、出産に関わる看護師にも「これを知っておいたら」という部分を習ってもらって。

 Lさん:確かに。それでクリニックとして「外国人受け入れ可能」になれば、海外からのママの選択肢も増えますよね。助産師、看護師をはじめ、病院としても海外の文化を受け入れてもらって、日本語以外の言葉、特に英語で対応できる環境を作っていきたいです。

interviewer:応援しています!

これから出産する人に伝えたいこと。

interviewer:助産師として、またご自身の経験から出産について思うことはありますか?

 Lさん:1つ目は「自分が好きなように選べる時代」ということですね。もちろん正しい知識を得ることが前提ですが。周りからどんな風に言われても、自分がやりたいことを選んで、満足いくお産にしてほしいし、その後の育児の仕方、スタイルも自分を信じて選んでいってほしいです。

interviewer:そうですね。でも正しい情報を得て、自分で選ぶことが今は難しいのかもしれないですね。

 Lさん:そうなんです。今いっぱい情報があるから何を信じていいのかわからなくなる。だからこそ、こちらも正しい知識を発信しなきゃって思います

interviewer:そうですね。

 Lさん:2つ目は「パパのサポートが大事」ということです。

interviewer:確かに。でもサポートする立場でありながら、育児情報の中にパパの視点ってあんまり取り扱われないですよね。「男ってこう考えちゃうんだよ」みたいなことって、女性はわからない部分であったりするから、いつか無痛分娩PRESSでも「パパの座談会」をしてみたいと思っています。

 Lさん:ナイスアイデアですね!すごく面白い。男女で育児に関する解釈も違う気がするので分かり合えるといいですよね。

 Lさん:パパも“自分ごと”として捉えてほしいんです。例えば妊娠中、出産も「頑張ってね」じゃなくて「 一緒に頑張る姿勢」でいてほしいし、産後も帰宅すると、可愛いからどうしても赤ちゃんの方ばかりに行ってしまいがちだけど、まずはママに。赤ちゃんと同じくらいママの”心と体”に目を向けてほしいです。

interviewer:では、赤ちゃんのお世話をママがして、ママのケアをパパがするっていうのを基本スタンスにした方がうまくいくんでしょうか。

 Lさん:そうですね。世の男性みんなにそうなってほしいです。

interviewer:ありがとうございました。

「助産師さん向けの英語コーチ」などLさんの活動はこちら。

詳しい内容はLさんのインスタアカウントをご参照ください!

@josanshi_english

また、ブログもありますので、そちらもご覧ください。

https://josanshi-english.com/

コーチを依頼したい方は、Lさんのインスタアカウントまで!

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