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2021.10.29
体験談

千葉県Kさん「痛みゼロ≠ダメージゼロ」/田中ウィメンズクリニック

東京での無痛分娩を経て、現在は千葉県にお住まいのKさん夫妻。妻、夫それぞれの立場で感じた無痛分娩体験をお伺いしました。

基本data

■name/Kさん夫妻

■年齢/夫_35 妻_32

■お住まいのエリア/千葉県

■家族構成/夫+妻+子ども(1名)

■出産施設/自由が丘「田中ウィメンズクリニック」 ※2020年に閉院

■無痛分娩回数/1回

■出産費用総額/100万円台-42万円(出産一時金)

■無痛分娩実施時期/2020年

取材時期:2021年7月

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身近な先輩の無痛分娩がきっかけで、夫婦の意見が合致。

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interviewer:ではまず、無痛分娩を知ったきっかけを教えてください。

夫:私の元上司である先輩ですね。その方が無痛分娩で出産されていて。その時の色々な話を奥さんに話してくれたんです。それがきっかけで妻も「無痛分娩がいいね」と言うようになりました。つまり、周りに無痛分娩の経験者がいたというのがきっかけになりますね。かなり関係の近い方だったので。

interviewer:その先輩からお話を伺って、すぐに無痛分娩をしようと決めたのですか?それとも、その後しばらく検討しましたか?

妻:結論から言うと、検討せずにすぐに無痛分娩にしようと決定しました。私はもともと幼少期に海外に住んでいて、周りにも帰国子女のような人が多いことから、海外では無痛分娩がかなり一般的で、市民権も得ているという情報を知っていたんです。だから、実は夫の先輩の方からお話を伺う前からも「無痛分娩をしたい」という想いはぼんやりと持っていました。でも、それをなかなか自分から言い出す機会もなかったんですよね。だから夫の先輩が無痛分娩をしたという話をしてくれたおかげで「実は私も無痛分娩がしたかった」という想いを夫に話すことができました。夫も先輩から無痛分娩の話を聞いているので「うちは無痛分娩でいこう」とスムーズに意見が合致したという感じです。

interviewer:「無痛分娩をしたい」と言っても、パートナーや両親に反対されて諦めるというケースもあるみたいですが、Tさん夫妻にはそういうことはなかったんですね。

夫:ボクはなかったですね。やっぱり身近な先輩が無痛分娩をしたというのが大きいですね。その先輩の子どもが元気に育っているのも知っていますし。なにか人体に影響を及ぼすみたいな事はないんだろうなーっていう感覚はありました。ボクの中ではもともと無痛分娩に対するイメージは、そこまで良くなかったんです。日本人はみんなそうかもしれないんですけれど、そもそも体に何かを入れるっていうのは、あんまり良い印象しないじゃないですか。麻酔であっても。でも、先輩のお子さんが無痛分娩で生まれて、元気に育っている姿を見ていたので、特に問題ないなと思うことができました。

interviewer:おふたりのご両親のリアクションはどんな感じでしたか?

夫:ボクは特に両親に「無痛分娩をする」ということは話してないですね。まぁ、話の流れで無痛分娩ということはわかっていたと思うんですけれども。特にリアクションはなかったですね。

妻:私は親から「羨ましい!」って言われました。たぶん、多くの女性に「痛みのない出産をしたい」という願いはあるのかなと思うんですね。でも、周りの偏見だとか、不安があったりして、無痛分娩に踏み切れなかったというケースも多いのかなと思います。母からは「私の時はそういうのがなかったから、羨ましいわ。いいね!」と言われました。

interviewer:無痛分娩をすることを決めてから、情報収集などはしましたか?

夫:ボクは特にしていないですね。

妻:私はすごい集めました。やっぱりネット検索でいろいろ調べましたね。基本は体験談の検索です。私の身近には無痛分娩の経験者がいなかったので、ウェブ上での情報収集が主でしたね。

interviewer:やっぱり体験談を読みたいというニーズは高いんですね。

夫:そうですね。経験者の話を聞きたいというのはあります。実際に産む側の視点という意味では、病院などが出す情報よりも信憑性がありますよね。

妻:私は情報収集にけっこうInstagramを利用していました。インスタには「子供アカウント」とか「出産アカウント」がたくさんあって、妊娠してからの経過とか、どういう出産をするのかとかをポストしている人がいて、そういうのもリアルな声として参考になりましたね。

夫:SNSの方が情報として信憑性があったよね。実感も感じるし。

妻:そうそう。無痛分娩がどういうもので、どういう仕組みかというのは、それこそ病院のホームページなどを見れば理解できるんですよ。ただ、実際に産んだ人の経験談的なものはあまりなくて、今の時点ではSNSが1番信用できると思いました。もう少しそれがしっかりしたウェブサイトなどで見れると安心だなと思いましたね。

夫:実際に本当に痛みがゼロなのかとかもわからないしね。

妻:無痛なのか、和通なのか、イキめるとか、イキメないとか、麻酔科医がいるのかいないのかとか。無痛分娩が必ずできるか、できないかとか。そーゆーリアルな声はSNSから情報収集していました。

interviewer:事前に色々と情報を仕入れていたとは思うんですが、それでも不安な部分や疑問点等はありましたか?

妻:出産というもの自体に対する不安は無痛分娩も自然分娩も変わらないと思うのですが、無痛分娩という出産スタイルに対する不安は正直なかったですね。理由はもともと無痛分娩の事例を聞いていて、世界には当たり前に無痛分娩で出産している国もあると言うことを知っていたから。あと「田中ウィメンズクリニック」では、しっかりと事前に研修みたいなことをやってくれたんですよ。「そもそも無痛分娩とは?」とか「無痛分娩の歴史」とか「無痛分娩のリスク」とか。2日間ぐらいかけてきっちりと研修をやってくださったので、ここでかなり不安を払拭することができました。

夫:その研修には、ボクも参加しました。

妻:そう。女性側だけではなく、パパママ一緒に参加する研修でした。

夫:ボクもその研修で世界の無痛分娩事情などを教えてもらって「無痛分娩が当たり前の世界もあるんだな」ということを知りました。

無痛分娩で産むまでと産んでから

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interviewer:出産したのはどこの病院ですか?

夫:もう多分、閉院しちゃったと思うんですけれども、自由が丘にある「田中ウィメンズクリニック」です。日本ではかなり早い時期から、無痛分娩をされているという病院でした。

interviewer:出産する病院をそこに決めた理由を教えてください。

妻:1番は家から近いことです。当時は都内に住んでいて、ここが条件も合い、近い産院だったんです。多くの人が産院を選ぶ際に重要視すると思うんですけれども、家から近いのですぐ通える病院というのは必須でした。2番目は無痛分娩を経験した先輩の方が、実際にそこの病院で産んでいて「すごく良かった」という話をしていたのも大きかったです。また、ネットの口コミでも「スタッフの方がみんな親切だった」など、評判が良かったんです。

interviewer:Tさんの体験した無痛分娩はどのようなものだったのですか?

妻:全く痛みのない計画無痛分娩・・・の予定でした。24時間麻酔科医が常駐している病院でしたし。陣痛も含めて全く痛みがない予定だったんですが、結果としては、先に破水をしちゃったので計画無痛分娩はできませんでした。計画無痛分娩の場合は「大体この日」って分娩する日を決めて、入院して麻酔を入れ始めるので、陣痛もなく事前に生まれる日が決まっているという感じです。私の場合は、予定の1週間前に破水しちゃって、計画通りにいかず。「ウソー!!」っていう感じでしたね。計画通りいければ陣痛もないはずだったのに。だから麻酔を打ってからの痛みはなかったですが、陣痛の痛みは少し体験しましたね。

interviewer:破水してから生まれるまで、どれぐらいの時間がかかりましたか?

夫:夜の2時に破水して、朝10時に生まれたから8時間ぐらいでしたかね。なんか覚えてるな。破水して一緒に病院に行ったんですよ。それが夜中の2時ぐらいでした。で、5時ぐらいに「まだしばらく生まれないだろうから、いったん帰って」と言われて。今度は家に戻ったら8時か8時半ぐらいに「もう生まれるから来い」って言われました。慌てて向かったのを覚えていますね。だから僕はなんかすごく忙しかった思い出が残っていますね(笑)。

妻:そうですね。あの日は朝起きたら、いきなり子宮口が全開になっちゃってて、先生から「もう生まれるねー」って言われたので、慌てて夫を呼び寄せました。この時に「やっぱり家から近い病院で良かったな」と思いましたね。夫もすぐ来れたので。やっぱり自宅から産院が近いのは必須だなって思います。で、そこから分娩台に乗って30分ぐらいで生まれました。

interviewer:予定外の破水からの出産で、非常にバタバタだったと思うのですが、夫であるKさんは仕事の予定などは大丈夫だったのですか?

夫:そうですね。当時はコロナ前だったので、平日は普通に出勤してましたし、出産時には分娩室にも入れました。ちょうど生まれたのが金曜の夜から土曜日にかけてだったので、仕事が休みだったから駆けつけやすかったんです。だから割と自由に動けましたね。たまたまなんですけど。

interviewer:陣痛の痛みを少し感じたということですが、麻酔を打ってからは痛みはありませんでしたか?

妻:一切なかったですね。最初に破水して、病院に着くまでタクシーを捕まえたりして、結局30分ぐらいかかっちゃったんですけれども。その時はまぁ陣痛と言うよりも「前駆陣痛(ゼンクジンツウ)」という、本番の陣痛の前のプレ陣痛みたいな痛みがあって。それだけ経験して、その後はもう先生に背中から麻酔していただいて、という流れでした。あと私の産んだ病院は、痛みが切れたら後から自分で麻酔を入れることができる機械があったんです。

夫:あれでしょ。なんか点滴みたいなのがつながっている装置みたいなやつだよね。

妻:そう。あとはもう「痛みが来たらこのボタンを押してね。適量の麻酔が入るようになっているから」と言われて。そんな感じだったので痛かった記憶がほんとにないですね。

interviewer:何回ぐらい自分で麻酔を追加したのですか?

妻:私の場合は、最初の麻酔を打ってから、痛みがなさすぎて、陣痛中も寝てたんですよね。だから結局1回だけしか追加してないですね。自然分娩だったら痛すぎて、そもそも眠れないと思うんですけれども、私は痛くなかったので普通に数時間寝て、友達とか親に「もうすぐ生まれそう」という連絡などをしていました。

夫:ボクもずっと妻を見ていて「痛みを感じてるな」と思ったのは、タクシーに乗せている時ぐらいでしたね。それよりも破水してるから「タクシーの中で羊水が出てきたらどうしよう」という方が心配でヒヤヒヤしてました。だから痛みに関して心配な気持ちになっていたのは、家からタクシーに乗せるぐらいまででしたね。人が痛みで叫んでる姿とか見ると、ボクも怖くなっちゃうと思うんですよね。でも、破水から生まれるまでを振り返ってみても「思ったよりも余裕そうだな」と感じたのを覚えています。「もうすぐ生まれる」と連絡がきて病院に駆けつけた時も、妻は「ヤッホー」みたいなリアクションでしたし(笑)。

妻:無痛分娩で痛みはないといっても、出産自体は怖いは怖かったよ。「ほんとにちゃんと生まれるのかな」とか「出血多量とかになっちゃったらどうしよう」とか。自分自身の命の危機は頭にあったんですけれども、痛みや苦しみっていうのがなかったので、そこへの不安はなかったですね。

interviewer:出産を終えて麻酔が切れたら、かなり痛いものなんですか?

妻:そうですね。麻酔が切れた後はめちゃくちゃ痛いです。特に裂けてるところ。縫っているんですけれども。あ、無痛分娩のデメリットとして1つ思い出したのは、出産の痛みを経験している方って、出産時に裂けたところの痛みとか、「後陣痛(コウジンツウ)」と呼ばれる、体が妊娠時から通常に戻っていく痛みって「大したことない」って思えるみたいなんです。でも無痛分娩の経験者同士で話していると「あれが死ぬほどつらかったよね」っていう話になります。裂けた痛みや「後陣痛」の痛みは、無痛分娩でも自然分娩でも同じ痛みなんですけれど、無痛分娩だとそこがMAXの痛みになっちゃうので、この時の痛みのイメージが強く残るんです。

interviewer:その痛みは、どれぐらい続くものなんですか?

妻:おそらくですが、みんな1ヶ月は痛みが続くと思います。もちろん個人差はあると思いますが「1ヵ月は痛くて歩けない」とか「ペンギンみたいによちよち歩きになっちゃう」とか「トイレ行くとすごいしみて痛い」とか、みんな1ヶ月くらいはそういうことはあるんじゃないかなと思いますね。

夫:歩幅が狭かったよね。ほんとにペンギンみたいで。妻の歩幅がすごく狭かったのを覚えています。

interviewer:他の無痛分娩経験者の方にお話を伺った時に、無痛分娩の場合、痛みがないから、勢いよく裂けてしまいがちみたいな事をお聞きしました。

夫:確かに、それはあるかもしれないですね。子どもが出てくる時もすごい勢いでしたもん。「ぶりんっ!」て出てきました。「ゆっくり」「ちょっとずつ」とかじゃなかったです。一気に出ました。

interviewer:赤ちゃんがお腹から出てくるまでって、ご本人はどういう感覚だったんですか?

妻:私は子どもを産むまでは、周りに無痛分娩をした友達とかはいなかったんですけれど、産んでから無痛分娩をした人と知り合うようになりました。そこで話して知ったんですけれど、病院によって麻酔のかけ具合が違うみたいなんですよ。なのであくまで私のケースというお話になるんですけど。私が産んだ病院では「自分でイキむことが大切」っていう考えがあって。私の場合はおへそから下は感覚がないんですけれども、おへそから上の腹筋的なところは感覚があるので、そこで思いっきりイキむみたいな。なのでイキんだりする感覚はあるんですよ。だけど、お腹の中で「赤ちゃんがどう動いてる」という感覚はわからなくて。だからイキみまくって、そして先生がお腹を押した際に「ブルン!!」と子どもが出てきました。なのでイキむ感覚だけはありましたね。

interviewer:無事に分娩を終えてからの流れはどういう感じでしたか?

妻:産んだ後は、自然分娩と変わらないと思うんですけど、胎盤の処理をして、先生が胎盤を見せてくれました。「こんなところに赤ちゃんがいたのか」って思ったりして、胎盤供養をして。その後は裂けたところを先生が縫ってくれて、あとは子どもの体を拭いてくれたりして。

夫:その時はボクも横にいたんですけれども、生まれてすぐに抱っこさせてもらいましたね。で、妻の胸のところに子どもをポンと置いて。「カンガルー抱っこ」って言うんだっけ?

妻:そう。無痛分娩だからって産んだ後に特別な工程があるというわけではないんですよ。

夫:あとは看護師さんが子どもをどこかへ連れて行ってくれて。その後は個室に移って、ご飯が出ましたね。

妻:そうですね。ちょうど終わったのがお昼の11時ぐらいで、もうすぐお昼ごはんという時間だったので、普通にご飯を食べましたね。たしかステーキが出たような気がします。

夫:そうそうステーキだった。出産直後なのに、ほんとに普通にご飯を食べていたので、なんかちょっとびっくりしたのを覚えています。しかも、ステーキだったので「ガッツリ食べているな」と思っていました。

妻:ものすごくお腹が空いていた記憶があります。「やっぱり出産ってエネルギー使うんだなぁ」とそこで思いました。あの時は、信じられないぐらいお腹が空いていました。

夫:ご飯食べ終わったかどうかぐらいの時に、個室に赤ちゃんが来ました。

妻:やっぱり無痛分娩でも、自然分娩でも、出産を終えると一仕事終えた後の体のダメージというか、疲労感は変わらないということで。すごい疲れた感覚がありましたね。だから寝る時は赤ちゃんを看護師さんに預かってもらっていました。「無理しないでね」と言われていたので。

interviewer:そこから退院まではどれぐらいの期間がありましたか?

妻:えーっと5日間ですね。

interviewer:その5日間は体の疲労感はどれぐらいありましたか?

妻:一般的に「出産後は交通事故にあったぐらい体がボロボロになる」と言われているんです。私もそういうイメージに近かったかなと思います。動けない感じです。もう極力ベッドの上で動かないような感じでした。「あれは的を得た表現だったんだな」と思いましたね。

interviewer:産後、体力が出産前まで戻ったのはいつぐらいですか?

妻:3ヶ月後ぐらいじゃないですかね。3ヶ月ぐらい経ってから子供を連れて出かける余裕が出てきました。ちょっと外出てみようかなとか。友達とランチに行くとか。そう思えるようになったのが3ヶ月後ぐらいなので、体力的にも精神的にもそこで元に戻ったなと思いました。

「痛みがゼロ=体へのダメージがゼロ」ではない

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interviewer:先輩からも無痛分娩のお話は聞いていたと思うんですが、実際に奥さんが無痛分娩でお子様を産んでから、無痛分娩に対する印象は変わりましたか?

夫:そうですね。すごい印象が変わりました。「お産って、こんなに平和に済むんだな」と思いました。もちろん他の方のお産を見たことがあるわけではないんですが、テレビの映像などで見たお産のイメージが強くて、ものすごい生死を彷徨うような壮絶なイメージがあったんです。無痛分娩の場合は、産んだ直後もふつうに妻と会話していましたし、妻は出産直後にお昼ご飯を食べたりしてて。とにかく妻の元気な姿が見れていたのが良かったですね。幸せな雰囲気に包まれた出産でした。いわゆる普通の出産のイメージだと、産んだ後に奥さんがボロボロで衰弱しきっているようなイメージですね。ですので、無痛分娩をしてよかったなぁと本当に思いました。痛みってやっぱりすごく体にダメージが出るんですね。

interviewer:無痛分娩について、メリットとデメリットに感じたことを教えてください。

夫:ボクは基本的に「妻が良いと思うならOK」というスタンスだったので、デメリットに感じたことはほとんどないです。でも、やっぱりコストは高かったですね。単純に自然分娩の倍ぐらい費用がかかりましたね。

妻:いや、それは病院がそういう料金のところだったからだよ。一般的には自然分娩の費用にプラス10万円ぐらいのイメージですよね。でも病院によって、麻酔科医が常にいる体制じゃなかったり、破水しちゃったら無痛分娩はできず、自然分娩で生まなきゃいけないだとかもあるし。施設やサービスレベルで料金は変わってきますよね。

夫:なるほど。そういうことなのね。

妻:メリットはとにかく幸福感を感じられること。幸福に溢れた出産という感じでしたね。痛みがないから冷静に「このタイミングでイキまなきゃ」とか「赤ちゃん頑張れ」とか思えて。なんだろう「辛いから頑張ろう」じゃなくて「早く会いたいな」「赤ちゃん頑張れ」とか素直に思えました。産んだ時も「やっと終わった」みたいな感想ではなくて、ほんとに100%感動。そういう気持ちになれたので、そこはとても良かったと思いますね。

夫:「大変そう」とか「必死」というのはなかったですね。だからボクも見ていて心配じゃなかった。パパの視点からだと、母子共に何かあったらという最悪のケースも考えたりするわけじゃないですか。でも、無痛分娩はそれと真逆の状態で出産を終えられる感じでしたね。痛みもなさそうだし、悲惨な感じは一切なかったです。「おい!大丈夫か!?」みたいなのはなかった。「あーよかったよかった」という感じですね。

妻:たぶん自然分娩ですごくつらい状態でがんばって産んだ時って、旦那さんが「大丈夫?大丈夫?」って心配してくれる感じだと思うんです。「頑張って!」っていう感じで奥さんへのケアとかもすごい頑張ると思うんですけど、そういうのはなかったですね。これはこれで無痛分娩のデメリットかもしれない(笑)。

夫:まぁ「妻が死んでしまうのでは!?」みたいな事は全く思わなかったですね。さすがにそうなったら必死のケアをする感じになると思うんですけれども。体はボロボロなんだろうけれども、痛みがないからリアクションもなくて「あ、大丈夫そうだな」って思っちゃうんですよね。

妻:それで言うと、麻酔は痛みを消してくれているだけで、実際は命がけだし、体もボロボロだし、出産が終わった後はしんどいんです。そこの部分は正しく世の中に普及しないと、無痛分娩に関する認識がおかしい方向に行くかなって今思いましたね。

interviewer:確かに勘違いしがちな部分ですよね。「痛みがない=ダメージがない」ということではないんですよね。

妻:そこの理解がちゃんと正しく伝わらないとって思いますね。「無痛分娩=楽」。楽をしているって思われちゃうと反対する人も出てくるし、それだったら無痛分娩やらないでおこうかなっていう女の人も出てきそうだし。

夫:見守る側の立場からすると、やっぱりリアクションがないと、余裕で生んでるみたいに錯覚しちゃうんだよね。なんというかクールに産んでた印象というか。

妻:ぜんぜん冷静じゃないんだよ。「赤ちゃん圧迫ししたらどうしよう」とか「出血多量になっちゃったらどうしよう」とか考えながら出産してるんだよ。だから「無痛分娩とは言っても、体へのダメージや心の不安がゼロになるわけじゃない」っていうことも正しく広まってほしいですね。一番の不安って「子供がこのまま無事に生まれてくるんだろうか」「私はこのまま死なないだろうか」っていうところなんですよ。そこは無痛分娩でも自然分娩でも変わらないですね。

interviewer:最後になにか言っておきたいことありますか?

妻:無痛分娩の話になるとけっこう熱くなっちゃうんですけれど。私は「もっともっと無痛分娩が増えたらいいな」と心から思っていて、先ほども言ったような「痛みがないと母として一人前じゃない」「子どもが可愛いと思えないんじゃないか」みたいなことを思っている方がいたら「そんな事はない」と言いたいですね。

interviewer:ちなみに無痛分娩をすることで、周りからなにか言われたりした経験はありますか?

妻:やっぱり麻酔そのものに対する拒絶反応みたいのがありました。「そもそも麻酔をすること自体が体に悪くない?」「子供に悪影響はないの?」とかは聞かれたことありますね。

あとは「痛みを経験してみたくないの?」というのも言われたことがあります。これは色んな人から何回か言われたことがありますね。「私は痛みを経験してみたいから無痛分娩やらない」という人もいました。

夫:聞いた話で「なるほどな」と思ったエピソードがあるんですけど。外国の方からすると「そもそも何で無痛分娩で生まないのか?」というのが疑問らしいんですね。だから「宗教的な関係でそうなのか?」と聞かれたりすることがあるそうです。「歯を抜くときだって麻酔をするのに、なんで分娩となると麻酔を使っちゃいけないんだ?もはやそれは信仰でしかないよ」と。自然分娩じゃなきゃいけないというのは「過去の人がそうだったから」という考え方が強い気がしますね。外国の方にそうやって言われたっていうのは、すごく興味深いなと思いました。

interviewer:その他に無痛分娩に関して、課題だと思う部分はありますか?

妻:費用がやっぱりかかっちゃうっていうのが大きな課題だと思いますね。私と主人は「命に関わるところだから、金額で妥協したくない」という考え方が一致していました。もう少しコストが下がれば、もっと普及するのかなと思いますね。結局、産院は遠いところには、なかなか通えないから、家から近い産婦人科の価格になっちゃうんですよね。うちは結局、よく知らずに、すごく高い病院に通ってました。途中で高い病院だということがわかったんですけど、その時は今さら変更ができない段階で。

夫:無痛分娩ってできる枠が少ないんですよね。病院によっては計画分娩になるので、病室が埋まっちゃいやすいんですよ。だから妊娠してて途中からやっぱり無痛分娩をしたいっていうのは、なかなか難しいと聞きますね。妊娠の途中からでも無痛分娩を選べるようになると、もっと色んな選択肢が増えるのかなと思います。

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