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2024.02.12
出産や育児を応援するサービス・人々

【前編】「助産師さんの仕事内容って何?」現役助産師さんに聞いてみました。

妊娠、出産では必ずと言っていいほどお世話になる助産師さん。でも看護師さんとの違いや、実際にどんな仕事なのかは、あまり知られていません。今回は、以前に無痛分娩の体験談を伺った助産師のLさんに、具体的な仕事内容、無痛分娩の現場のことなどをお伺いしました。

LさんのProfile

Lさん(無痛分娩の体験談はこちら

病院の産科病棟で3年間助産師として働き、その後、英語を勉強したいと1年間オーストラリアに留学。帰国後は語学を活かして外国人の患者が多い都内病院の産科で8年半働く。その間、プライベートではフランス人と国際結婚し、男の子3人を出産。現在は、フリーランス助産師として「外国人向けの出張助産所」や「助産師さん向けの英語コーチ」などこれまでの経験を活かして、多方面で活動。

今、どんな活動をしていますか?

interviewer:Lさんはフリーランスの助産師さんですが、どんな想いで活動をされているのかお聞かせください。

Lさん:私が一番やりたいのは、言葉や文化の壁で心細さを感じている「海外から来たママ」の力になりたいっていうことなんです。

interviewer:なるほど。具体的には?

Lさん:大きく2つあって、まず1つが外国人のママたちを直接サポートすること。

interviewer:日本語が分からないママたちってことですか?

Lさん:はい。日本に住んでいて英語しか話せないママたちに、育児のことなどを英語で相談に乗ったり、産後、書類の記入などで困ったりした時に、私が出張して直接手助けしています。

interviewer:それが「外国人向けの出張助産所」なんですね。

Lさん:そうです。2つ目は、オンラインで助産師さんたちに英語を教えています。

interviewer:「英語を話せる助産師さん」を増やすということですか?

Lさん:はい。英語でコミュニケーションを取れる助産師さんがいれば、海外からのママたちはすごく助かると思うので。

interviewer:確かに心強いですね。でもご自身の子育てもしながら、どのようにお仕事されているのですか?

Lさん:フリーランスだから、自分で全部決められるのでゆるりとやっています。例えば、子どもが保育園に行ったあと、8:30から17:30まで仕事をするとか。

interviewer:基本的には、平日の日中だけですか。

Lさん:時々土曜日とかお休みの日にオンラインの仕事が入ったり、夜に必要な方が相談してきた時は、夜も仕事をしたりすることもあります。

interviewer:じゃあ、子育てしながら、隙間時間もいっぱい使ってお仕事されているんですね。

Lさん:そうですね。

interviewer:例えば、助産師として病院から「この日ちょっと来て」みたいなことはあるんですか?

Lさん:今は病院とは契約していないので、それはないんです。

interviewer:では完全に「BtoC」(直接個人へのサービス提供)みたいな形なんですね。

Lさん:そうです。

助産師を目指したきっかけや経歴を教えてください。

interviewer:助産師になろうと思ったのはなぜですか?

Lさん:私の祖母が助産師で、小さい頃からその姿を見てきたことがきっかけですね。

interviewer:なるほど。

Lさん:勤めていたのは小さいクリニックだったんですけど、昼夜問わず陣痛が来たママがいると、車で飛ぶように向かうんです。70歳過ぎても(笑)。

interviewer:夜中に電話鳴ったらバーって行くっていうのは手塚治虫の名作マンガ『ブラックジャック』に出てくる助産師さんのイメージに近いです。

Lさん:そうなんです。しかもBMWを乗り回して。

interviewer:BMWですか(笑)。

Lさん:70歳過ぎてもみんなに必要とされて、生き生きしている姿がかっこよかったんです。

interviewer:素晴らしいですね。

Lさん:それで「助産師になりたい」って思いました。

interviewer:なるほど。では、実際に助産師になってからは、どうでしたか?

Lさん:まず3年間、日本の病院の産科病棟で助産師として働きました。その後、英語を勉強したいと思って、1年間オーストラリアに留学しました。といっても、半分遊び、半分勉強みたいな感じです。

interviewer:帰国後は?

Lさん:せっかく習得した英語を仕事に活かしたいと思って、都内でも大使館の方など外国人がたくさん来る病院に就職して、そこで8年半働きました。

interviewer:そこには一番長くお勤めだったんですね。

Lさん:そうですね。その病院で働く中で、海外から来たママたちは、入院中は相談できているけれど、退院後がすごく大変だなって感じていて。産後に英語で相談できる窓口もないし。

interviewer:確かに。

Lさん:自分がその産後のママたちをサポートする役目をしようと思って、8年半働いた後、退職して「外国人向けの出張助産所」を開業しました。

interviewer:今からお産をする人に出会って、サポートを始めるみたいな感じですか。

Lさん:今からお産というよりは、病院から自宅に戻った後のママと赤ちゃんのサポートですね。

interviewer:それは、Webで募集するんですか?

Lさん:そうです。instagram自分のホームページで。

interviewer:では、ご自身の結婚、出産からの子育てっていうのは、どのタイミングで?

Lさん:それは8年半病院で働いている間に、全部入っています。

interviewer:なるほど。フリーランスになってからだと、めちゃくちゃ忙しいなと思って。

Lさん:そうですよね。外国人のサポートを始めたのは、自分の結婚、出産を経てからです。その中で英語対応できる病院探しに大変なママがいるとか、英語対応できなくて困っている助産師さんが多いって気づいて、さらに1年後、助産師さんにオンラインで英語を教えるようになりました。

interviewer:でも1年間の留学で、教えられるほど英語を習得できたって、めちゃくちゃすごいって思うんですが。

Lさん:実際に1年間ではそこまで習得できなくて、その後、病院で働きながら必要な英語を習得した感じです。

interviewer:なるほど。その8年間働いている間に、産科に来られた多くの外国のお客さまとの関わりの中で、さらに磨きをかけていったということですか。

Lさん:そうです。あとは、たまたま出会って結婚したフランス人の夫が日本語を話さないし、私もフランス語を話さないので、夫との日常会話でも英語を話して習得していきました。

interviewer:夫さんは、日本語が全然分からない感じですか?

Lさん:本当に少しだけ話せる程度です。

interviewer:でも、それでも日本で不自由なく暮らせるものなんですね。

Lさん:そう、何とかなっちゃうんですね。仕事で日本語を使わないからっていうのが大きいと思います。仕事で必要だったら絶対勉強しますからね。

interviewer:なるほど、そうですよね。

助産師って具体的にどんなお仕事をするんですか?

interviewer:助産師さんって、文字どおり「出産に関わる人」というのは分かるんですが、具体的な仕事内容とか仕事の範囲がよく分からなくて。

Lさん:確かに「出産のお手伝いをする」のが一般的なイメージだと思います。実際に助産師の8割以上が病院やクリニックで仕事をしているようです。

interviewer:病院やクリニックに就職してということですね。

Lさん:そうです。でも実際には助産師の仕事って、出産に関わるのはほんの一部だけなんです。

interviewer:え、そうなんですか!?

Lさん:ざっくり言うと、女性とその家族の一生に関わって、心と体をサポートするのが助産師のお仕事なんです。だから、妊娠、出産、子育てだけじゃなくて、赤ちゃんの時から幼少期、思春期の性教育も。

interviewer:性教育も仕事の範囲なんですね。

Lさん:はい。あとは子育て期が終わって、更年期に入る女性のサポートをしている人もいますし、実際に範囲は広いです。

interviewer:更年期まで!?婦人科の先生みたいなこともやるんですね!

Lさん:そうですね、婦人科の知識もある程度必要だと思います。

interviewer:なるほど。やはり「助産」という2文字の印象が強すぎて、出産の場面に特化した仕事っていうイメージがかなり強い印象でした。

Lさん:そうですよね。でも本当は女性の一生に関わる範囲の広い仕事です。

interviewer:ちなみに、フリーランスの助産師さんって増えているんですか?

Lさん:正確なデータは分からないですけど、感覚的には少しずつ増えてきていると思います。

interviewer:そうなんですね。

Lさん:世の中の働き方も多様になってきているので。あとは、SNS も使えるから自分の強みを発信できるし、活かしやすくなっていますよね。だから『助産師×〇〇』みたいに個性をアピールして、フリーランスで活動している人が増えてきていると思います。

interviewer:助産師さんに関わらず、それって時代の流れですよね。

Lさん:本当にそうですね。

助産師になるためには。

interviewer:助産師ってどんな学校で勉強すれば資格が得られるんですか。

Lさん:いくつかルートはあるんですけど、その1つが看護大学や大学の看護学部での4年間で、助産師になるためのコースを追加で専攻します。

interviewer:なるほど、その4年間で資格が取れるのですね。

Lさん:もしくは看護師の専門学校や大学に行って、まず看護師の資格を取ってから、助産学校に1~2年行って、プラスアルファで資格を取る。今言ったどちらかが多いと思います。

interviewer:基本的に、入口は看護系の学校なんですね。

Lさん:そうです。海外だと、看護師の資格がなくても、助産師っていう資格だけを取れる国もあるみたいなんですけど。

interviewer:あ、そうなんですね。

Lさん:日本では、助産師は必ず看護師の資格を持っています。

interviewer:看護師の資格に加えて、助産師の資格を持っている人ということですね。看護師免許も助産師免許も国家資格だから、Lさんは国家資格を2つ持っているということになる。

Lさん:そうです。専門の大学に行くと、看護師と保健師の資格が取得できます。そこからさらに専攻した人は助産師の資格も取れます。

interviewer:保健師の資格も取れるんですね。

Lさん:保健師は保健所などで仕事をするような職種なんですけど、必ず看護師資格を持っています。保健師も看護師資格がベースにあって取れる資格です。

interviewer:あ、そういうことですね。保健師も助産師も、資格を取る上では看護師と関係がないと思っていました。

Lさん:そう思ってしまいますよね。

interviewer:助産師、保健師ってあまり関わることがないので、何となく看護師の方が資格を取得するのが難しいのかなって思っていましたが、逆だったんですね。看護師資格を持っていることが前提ということが今、分かりました。

Lさん:確かにそう。その業界にいる自分にとっては当たり前だけど、意外と知られてないっていうことが結構あるものですよね。

interviewer:本当に。みんな知らない気がします。面白い発見でした。

助産師さんってこんな人が多い。

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interviewer:助産師に向いているのは、どんな人だと思いますか?

Lさん:向いているというのは、あまり思い浮かばなくて。でも「人のためになりたい」っていう想いがある人は、みんな向いていると思うんです。

interviewer:実際にこんな人が多いっていうことはありますか?

Lさん:情に厚い、情熱のある人が多い気がします。あと「おおらかさ」とここぞという時の「俊敏さ」の両方を兼ね備えている人がすごく多いと。

interviewer:確かに、おおらかさに加えて、命に関わる場面もあるから「瞬間の判断」も大切ですよね。

Lさん:そう思います。あともう1つ、たぶん全員赤ちゃんが大好き(笑)。母性あふれる人が多い気がします。

interviewer:やっぱりそうなんですね。海外のネット記事で「赤ちゃんを抱っこするボランティア」を見たことがありますが、生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこしていたら、人ってそんな心が腐らないんじゃないのかなって思います。

Lさん:みんなが幸せになる。嫌な思いをする人はいないですよね。

interviewer:看護学校の中でも、赤ちゃんが好きな人は「私、助産師かな」っていう感じで進路を選んでいくものなのですか?

Lさん:意外に入口は“赤ちゃん”ではない気がします。むしろ、仕事で赤ちゃんとどうしても接するから、気づけば「あ、赤ちゃんがいるから抱っこしよう」「かわいい」って赤ちゃん好きになっちゃうんだと思います。

interviewer:「赤ちゃんが本当に好きなんだなぁ」と感じる助産師仲間のエピソードってありますか?

Lさん:休憩時間でも赤ちゃんを抱っこしに行っている人が結構いたり、普段スタッフには強い口調で話すのに、赤ちゃんを抱っこすると優しくなっちゃう人がいたりします。

interviewer:なるほど。確かに赤ちゃんならではの“癒しの力”がある気がします。

Lさん:そう、本当にありますよね。

出産現場での「助産師の役割」は?

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interviewer:出産現場で、医師の役割はなんとなくイメージがつくのですが、助産師と看護師の役割の違いって意外に知られていない気がします。

Lさん:そうですね。看護師も助産師も患者さんのケアをしたり、あとは医師の診療介助をしたりというのは一緒なんです。明確に違うのは、助産師は正常なお産だったら、自分の判断でお手伝いできることです。

interviewer:つまり、医師の判断を仰がなくても赤ちゃんを取り上げられるということですね。

Lさん:そう。内診して「あとどれくらいで赤ちゃんが生まれるのか」を判断するとか。

interviewer:看護師は、例えベテランでも、医師の判断が要るんですね。

Lさん:はい。看護師は内診をしてはいけないし、生まれた赤ちゃんを取り上げるのも免許的にだめなので、助産師にしかできないんです。

interviewer:そうなると、例えば医師と助産師で「もう生まれると思いますけど」「いや未だだと思う」とか判断が微妙に分かれてしまう場面はありますか。

Lさん:そういう場面がないわけではないですが、それぞれの役割の中で協力しながら、妊婦さんがいい状態になるようベストを尽くすのが基本だとは思うんです。何も異常がないお産に関しては、医師は助産師を信頼して任せてくれているところがあります。

interviewer:なるほど。本当にイレギュラーな時に、医師が出てくる感じなんですか。

Lさん:ただ、病院とかクリニックだと、何かが起こったら医師の責任になるので、必要なことのお伺いは立てるようにはしていますね。

interviewer:医師と助産師がコミュニケーションをとりながら、問題なければそのまま助産師が進めていくみたいな感じなんですね。

Lさん:そうです。

interviewer:1人の妊婦さんがこれから赤ちゃんが生まれそうだという時、スタッフ間の事前のコミュニケーションは、どういう感じなんですか。

Lさん:基本的に勤務の変わり目で申し仕送りがされていて、その妊婦さんの情報を正確に伝えているのと「〇〇さんは今こんな感じ」などスタッフ間では、常時会話の中で情報共有をしながら過ごしていますね。いつお産が始まるか分からないので。

interviewer:なるほど。

Lさん:妊娠中に特記事項がある人、お産の時に注意が必要な人は、入院する前に情報共有されていますが、それ以外の人は定期的な妊婦健診の情報のみで、どんな経過かは入院してから共有しています。

【後編】「助産師さんの仕事内容って何?」現役助産師さんに聞いてみました。

につづきます。

「助産師さん向けの英語コーチ」などLさんの活動はこちら。

詳しい内容はLさんのインスタアカウントをご参照ください!

@josanshi_english

また、ブログもありますので、そちらもご覧ください。

https://josanshi-english.com/

コーチを依頼したい方は、Lさんのインスタアカウントまで!

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