東京都蓮井英理さん 3人目で念願の無痛分娩/東京衛生アドベンチスト病院
13歳までニューヨークで過ごし、その後は千葉県で生活をしていた蓮井さん。自身が無痛分娩で生まれたため、麻酔を使ったお産をすることがあたり前だと思っていました。22年前に1人目を妊娠した時には近くに無痛分娩ができる病院がなく、2人目は和痛分娩、3人目でようやく無痛分娩が実現。歳の差兄弟の出産から感じる時代の変化やアメリカとの出産事情の違いなどお話を伺いました。
【基本data】
■name/蓮井英理さん
■年齢/42
■お住まいのエリア/東京都
■家族構成/夫+妻+子ども(3人)
■出産施設/東京衛生アドベンチスト病院
■無痛分娩回数/1回
■出産時支払い費用/不明
■無痛分娩実施時期/2015年7月
取材時期:2024年7月
そもそも無痛分娩できる病院が近くになかった

interviewer:本日はよろしくお願いします。
蓮井さん:よろしくお願いします。
interviewer:蓮井さんはご出身がアメリカだそうですね。
蓮井さん:そうです。13歳までニューヨークにいて、そこから千葉県へ引っ越しました。
interviewer:アメリカでは無痛分娩の割合が高いと聞きますが、無痛分娩はご存じでしたか?
蓮井さん:むしろ無痛分娩があたり前だと思っていました。
interviewer:やはりそうなのですね。歳の離れたお子さんが3人ということですが、最初のお子さんは千葉県船橋市の「山口病院」で自然分娩だったそうですね。
蓮井さん:大学生の時に、いわゆる「できちゃった婚」をしたのですが、今から22年前で、家から行きやすい範囲で無痛分娩ができる病院を探しても、1つもなかったんですよね。都内で探せばあったのかもしれないのですが。
interviewer:そうですよね。その頃は無痛分娩ができる病院自体が、あまりなかったと思います。
蓮井さん:あと、当時は「1人くらいは普通に自然分娩で産んでみようかな」と思う気持ちもありました。でも実際に出産となるとあまりにも痛くて。
interviewer:そうだったのですね。2人目の時はいかがでしたか?
蓮井さん:その頃には、最初の子がもう中学生だったので、10数年前に比べれば無痛分娩が増え出してきた感じでした。それでも当時住んでいた千葉県西船橋の近くには、無痛分娩ができる病院がなくて。いろいろと調べた結果、東京都豊島区にあるクリニックで和痛分娩にしました。
interviewer:なるほど。自宅からかなり遠い病院を選ばれたわけですね。
蓮井さん:1人目の時は、実家から離れたところで産むのは不安でしたが、2人目にもなればそれもないし、結局、病院へは夫に車で送迎してもらえたので、場所のことはあまり考えていなかったように思います。
interviewer:なるほど。
interviewer:和痛分娩ということで、1人目の時と比べて、多少痛みが緩和されている感じはありましたか?
蓮井さん:「(自然分娩した時と)変わらないくらい痛い」と騒いでいたのですが、看護師さんに「1人目の時はもっと痛かったはず。覚えてないだけ」となだめられました。
interviewer:痛みの感じ方は、ご本人にしかわからないですよね。
蓮井さん:「確かに1人目の方が痛かったかな」とは思いつつ、「それにしても十分痛いんだけど」という気持ちがありました(笑)。
interviewer:なるほど。そしてようやく3人目は無痛分娩ができたのですね。
蓮井さん:そうです。「東京アドベンチスト衛生病院(当時は東京衛生病院)」で出産して、すごくよかったです。
interviewer:どういったところが良かったのでしょうか?
蓮井さん:本当に「全く痛くない」ところ。あとは、割に自由度が高いところです。病院によっては「母乳以外にミルクを飲ませない」とか「母子同室でなければいけない」とか、いろんな方針やルールがありますよね。
interviewer:確かに。
蓮井さん:でも比較的やりたいようにやらせてくれる病院でした。3人目ということもあり「母子同室ではなく、病院にいる時ぐらいはゆっくり寝たいし、ミルクもあげちゃって」くらいのわがままを言っていたのですが「そうよね、疲れているからいいよね」という感じで、優しくて柔軟な対応でした。「こうしなきゃいけない」という縛りがすごく少ない病院という印象です。
interviewer:「東京アドベンチスト衛生病院」に通われていた時は都内にお住まいだったのですか?
蓮井さん:いえ、その時も西船橋でした。
interviewer:「東京アドベンチスト衛生病院」は東京の「荻窪」駅が最寄りですから、千葉県の「西船橋」駅からだとかなり遠いですよね。
蓮井さん:車で送迎してもらったので距離はそこまで負担ではありませんでした。しかも38週目に陣痛促進剤を使った計画出産をしたので、車で行く日程も早めに予定できていて、安心でした。
interviewer:ちなみに、病院はどのように探されたのでしょうか?
蓮井さん: 3人目は今、小学3年生なので9年前の話ですが、その頃には無痛分娩で産む友だちも増え始めていました。「東京アドベンチスト衛生病院」は、仲のいい友人が何人か出産していて「めちゃ良かったよ」というのを聞いて決めました。
interviewer:なるほど。ようやく時代が追いついてきた感じですね。
蓮井さん:本当にそうですね。
日本での無痛分娩には不安も

interviewer:3人目のお子さんを無痛分娩で出産した時は、計画出産ということでしたがいかがでしたか?
蓮井さん:そうですね。38週目に入ってすぐのスケジュールで日にちを決めて、陣痛促進剤を打ってという感じです。
interviewer:なるほど。
蓮井さん:陣痛が始まってすぐに麻酔を入れたので、子どもが生まれる直前もお昼ごはんを何事もなく食べていました(笑)。陣痛が来ているのは、モニターを見ればわかるのですが、痛みはゼロなので。
interviewer:おぉ、すごいですね。
蓮井さん:実は2人目の和痛分娩の時も、陣痛は生理痛程度でわずかでした。ただ、産む直前くらいになると、自然分娩と同じくらい痛くて。それを考えると3人目は本当に何も痛みがない状態でした。
interviewer:なるほど。
蓮井さん:生まれるまでの痛みがゼロだった分、産んだ後のしんどさのようなものは感じました。痛みの山が多少あったり、会陰切開の部分が少し痛かったりということがありました。
interviewer:そうだったのですね。パートナーの方やご両親から、無痛分娩することに対して何かリアクションはありましたか?
蓮井さん:そもそもうちの親は、アメリカで子ども3人を無痛分娩でしか産んだことがないんです。
interviewer:つまり、蓮井さんご自身も無痛分娩で生まれているということですね?
蓮井さん:そうです。だから母親は全く抵抗なく、夫は自分が産むわけではないので「好きにすればいい」という感じでした。自然分娩よりも費用が少し高めでしたが、その抵抗もなかったです。
interviewer:なるほど。日本ではアメリカほど無痛分娩の割合が高くないので、分娩前に不安になったり、疑問があるけど医師に聞くに聞けなかったり、という話をよく聞きますが、ご自身の中で不安は?
蓮井さん:そうですね。無痛分娩に関しての不安は2つあって、1つは先ほども出ましたが夜間だと医師がいないので対応できずに、自然分娩になること。もう1つは症例数が少ない病院だと無痛分娩にあまり慣れていない場合があって、そこが不安でした。アメリカであれば基本的には全件無痛分娩で生まれてくるので、その心配はないですよね。
interviewer:確かに。
蓮井さん:そういう意味では「東京アドベンチスト衛生病院」は、症例数も多かったし、実際に友だちもそこで産んでいるという安心感はありました。
生まれる直前に3人がかりでお腹を押されて

interviewer:出産の時は前日から入院だったのでしょうか。
蓮井さん:2人目の時は前日入院でしたが、3人目の時は当日の朝一番に行って、陣痛促進剤を打って、 夕方には生まれていた気がします。
interviewer:その間に何かしんどい思いをしたことはありますか?
蓮井さん:何ひとつなかったです。出産前のいろんな検査があって、最後の検査はお腹にモニターをつけていましたが、私は携帯電話で友だちに連絡をしたり、マンガを読んだりしていました。
interviewer:リラックスされていたのですね。
蓮井さん:お昼ごはんを食べている頃に「そろそろ陣痛が来ていますね」と言われました。
interviewer:ご家族の立ち合いは?
蓮井さん:上の子ども2人は母親が見ていて、夫だけ立ち合いをしていました。でも最後になかなか出てこなくて、結局夫も外に出されたんです。
interviewer:なぜ夫さんは外に出されたのですか?
蓮井さん:あまりにも赤ちゃんが出てこないので、結局3人がかりでお腹に乗られる感じでお腹を押してもらったんです。ただ、それ見ると怒る夫さんもいるみたいなんですよね。 そういった理由で外に出てもらうことになりました。
interviewer:3人がかりで上に乗られて蓮井さん自身は大丈夫でしたか?
蓮井さん:私は何の痛みもないから何も苦しくはないのです。1人目と3人目がそうだったのですが、首の周りにへその緒が巻いて出てきたから、心拍の低下もあって危なかった。だから急いで出さなきゃいけないけれど、もう少し時間がかかりそうということで、たぶんお腹を押したのだと思います。
interviewer:でもちょっとびっくりしますよね。
蓮井さん:男性看護師がお腹の上に乗っているという状況でした。
interviewer:圧のようなものは感じましたか?
蓮井さん:それは感じましたが、全然痛くないし、息苦しさもなかったです。
interviewer:では本当に麻酔入れてから生まれるまでは「痛みゼロ」のままだったのですね。
蓮井さん:そうです。ただ、あとで傷口の痛みと、少し重い生理痛のような感じがありました。実は生理痛がないからよくわからないのですが。
interviewer:なるほど。普段は生理痛を感じないタイプなのですね。
蓮井さん:そうですね。生理でも何事もなく過ごしています。出産直後は、下腹部に鈍痛があって、ズシリと重たい感じと、たまにキュルキュル痛むという感じでした。
interviewer:それはどれくらい続きましたか?
蓮井さん:入院している間くらいだと思います。2〜3日はお腹が結構痛くなったりして、傷口は1週間くらい痛かったです。
interviewer:出産したことで、体力が落ちているとか、衰えているといった感覚は?
蓮井さん:むしろそれほど体力を奪われなかった気がします。1人目の方が圧倒的に体力を奪われた感じですね。
interviewer:では3人目の時は産んでから比較的すぐに回復されたわけですね。
蓮井さん:出産して2週間経った頃には子どもを連れてあちこち遊びに出かけていました。母親からは「1ヶ月くらいおとなしくしておきなさい」とガミガミ言われながら(笑)。
開放的な空間、行き届いたケアで快適に

interviewer:「東京アドベンチスト衛生病院」の食事はどうでしたか?
蓮井さん:美味しかったですね。比較的食べやすかった気がします。
interviewer:野菜中心でヘルシーな料理が出ると聞いたことがあります。
蓮井さん:確かに。基本的にお肉を使わないメニューで、唐揚げが出てもお肉ではなく大豆ミートでしたが、違和感なく美味しく食べられました。
interviewer:それはいいですね。
蓮井さん:あと家族が面会に来た時に、自分の部屋以外で集まってもらえる場所もあるなど、いかにも病院という感じではないのが快適でした。空間としてあまり息苦しさがなかったのがよかったです。
interviewer:なるほど。他に助産師さん、看護師さんやその他のスタッフさんの印象は?
蓮井さん:全体的にとても良かったですね。私は痛みに弱くてすぐに「痛い」と騒ぐタイプ。でも病院によっては痛み止めも含めて、産後は絶対に薬を出さないところもあると友だちから聞きました。
interviewer:そうなんですね。
蓮井さん:この病院では「痛いのであればガマンしない方がいいよね」という考え方なので、痛み止めの薬も出してくれました。いろんな意味で「こうあるべき」があまりなく、希望に応えてくれた印象です。お腹が少し痛いのであれば温めた方がいいとカイロを持ってきてくれたり、カイロが冷たくなったら深夜でも嫌な顔をせず温め直してくれたり、すごく優しくしてもらったのを覚えています。
interviewer:蓮井さんご自身が「もっとこうしておけばよかった」ということはありますか?
蓮井さん:快適に過ごせるので、テレビはありますけど、もっと自分の時間を楽しめるものを持っていけばよかったと思います。
Interviewer:例えば、好きな映画とかでしょうか?
蓮井さん:そうです!あまり細かなことを言われないので、周りに迷惑をかけない程度のアロマとか、自分の好きなものを入院中に楽しみたかったです。
interviewer:産後の体調について、出産前ぐらいまで回復したのは、どれくらい経ってからですか?
蓮井さん:2週間で「復活した」という感じがしました。病院にいる時は「もう眠いからよろしく」と言えば看護師さんが代わりにやってくれますが、家に帰ってからの方が夜泣きもあるし、全部自分でしなきゃいけないので大変です。それに慣れるのに少しかかるけど、2週間後には多少寝不足でも元気でした。
interviewer:1人目のお子さんが当時中学生だったのなら、ちょっと手伝ってもらえそうですね。
蓮井さん: 1番上は男の子なので、手伝うというほどでもないですが(笑)。でも「ちょっと見といて」と言える人がいると、安心してお風呂に入れるので、全然違います。とりあえず「異常があったら教えて」と誰かに言えるだけでも日常生活が送りやすいですね。
interviewer::確かにそうですね。
蓮井さん:ママ1人、子ども1人で、パパが仕事で遅くてなかなか家にいない状態だと、 シャワーも「寝ている間に一瞬で済ませなければ!」みたいな気持ちになると思います。それが「ちょっと見ておいてね」と言えると、気持ちもゆっくりとお風呂入れます。
interviewer:ワンオペだと本当にきついと聞きます。歳の離れた兄弟の存在は大きいですよね。
無痛分娩がもっと日本で広がれば

interviewer:無痛分娩を経験されて、どんなメリットを感じましたか?
蓮井さん:圧倒的に体の負担が少ないので、日本でも広まればいいと思います。今、先進国で無痛分娩がデフォルトじゃない国がどこなのかを逆に知りたいです。
interviewer:そうですね。日本はとにかく低いと言われていますね。
蓮井さん:韓国でも、無痛分娩が一般的になりつつありますよね。
interviewer:韓国では40%と出ていますね。あと数年前のデータでは、中国が10%と少ないです。
蓮井さん:日本での無痛分娩の割合は、今どのくらいですか?
interviewer:最近、ようやく8%になったところです。
蓮井さん:中国よりもさらに無痛分娩が少ないのですね。中国は人口が多いし、国土が広いので都会から離れた場所も多く、難しいと想像はできますが。
interviewer:日本の「クリニックで産む」というスタイルは珍しいとも言われています。アメリカであれば大きな病院で出産するのが一般的ですよね。
蓮井さん:確かにそうです。
interviewer:日本ではクリニックが多い分、医師の数が分散して、麻酔科医を集めにくいことも背景としてあるようです。
蓮井さん:なるほど。日本でも人口が少ない地域や離島では難しいかもしれないですが、東京に住んでいる場合は、みんなが無痛分娩の選択肢を考えてもいい気がします。
interviewer:無痛分娩の割合を東京だけで見れば、もっと高いかもしれないですね。
蓮井さん:でもニューヨークのように100%無痛分娩ということではないはずです。もちろんアメリカでも稀に異なる出産方法をしたいという考えの人もいますが。
interviewer:そのようですね。
蓮井さん:例えばオーガニックな生活をしていて、自然に産みたい人が水中出産などむしろすごく大変な思いをして普通に産むようです。アメリカでは元々自然分娩をする環境がないので、自宅で産むという人が稀にいますが、周りではほぼ聞いたことがありません。
interviewer:アメリカでは何も言わなくても無痛分娩になるようですね。あくまで日本の場合ですが、無痛分娩をするデメリットは何かあると思いますか?
蓮井さん:経験や症例数が少ない病院で無痛分娩をするのは不安という点くらいです。出産時、脊髄に麻酔を入れるということなので「麻酔の量がちょっと違っていて…」と言われて体に違和感が残っても大変じゃないですか。
interviewer:確かに。
蓮井さん:だから、きちんと研修を受けて無痛分娩に慣れている先生がいる病院が増えていけば、その不安も解消されますよね。
interviewer:おっしゃる通りだと思います。それほど症例がないのに「うちは無痛分娩ができます」と謳っている病院が結構多いと聞くので。
蓮井さん:そう、それが不安につながるんですよね。
interviewer:これから無痛分娩をしようか迷っている人にメッセージをお願いします。
蓮井さん:日本の美徳のようなもので「お腹を痛めて産んだ子はかわいい」ということはあるかもしれません。どちらも経験して思うのは、お腹を痛めても痛めなくても、子どもの可愛さは変わらないということです。女性として自然分娩を経験してみたいという人はそれでもいいし、そうでない人には100% 無痛分娩をおすすめします。
interviewer:どちらも体験されている蓮井さんだからこそ説得力がありますね。今日は貴重なお話をありがとうございました。
蓮井さん:ありがとうございました。
蓮井さんは「オリジナルウェディング」をプロデュースする会社を経営

今回お話を伺った蓮井英理さんは、結婚式のプロデュース業をされています。例えば妊娠をきっかけに結婚する場合「結婚式をするかしないか、どうしよう」と悩んでいる段階では、なかなか結婚式場へ相談に行きづらいものです。そのような場合でも「相談に来てもらって大丈夫!」と蓮井さん。相談の中で予算感を聞いてから考えるのもOKで、結婚式はしないけど、ウエディング写真だけ撮ってほしいという人もいるそう。詳しくは、下記のホームページをご覧ください。
■株式会社Diamond Designers(ダイヤモンド デザイナーズ)
https://www.diamonddesigners.jp/