福岡県 看護師いまゆさんの無痛分娩【前編】 反り腰でトラブル発生/井槌病院
地元の福岡県で看護師として働き、第一子を無痛分娩でご出産されたいまゆさん。職業柄、無痛分娩のことは知っていたそうでしたが当時は良い印象を抱いていなかったそうです。そんないまゆさんが無痛分娩を選んだ背景にはどういった経緯があったのでしょうか?
【基本data】
■name/いまゆさん
■年齢/妻_27 夫_31
■お住まいのエリア/福岡県福岡市
■家族構成/妻、夫、娘(4ヶ月)
■出産施設/井槌病院
■無痛分娩回数/1回
■出産費用総額/約67万円(無痛分娩費用:10万円+入院料・個室費用・その他:約57万円)-42万円(出産一時金)=約25万円
■無痛分娩実施時期/2022年3月
取材時期:2022年7月
生物学的に父親の役割を完璧に果たせているのは、ゴリラだけらしい。
interviewer:福岡にお住まいとのことですが、福岡では無痛分娩ができる病院はどれくらいあるのですか?
いまゆさん:正確な数は把握していないのですが、だいたい福岡市で無痛分娩をしたいとなると「井槌病院」と「福岡山王病院」と「東野産婦人科」が有名ですね。
interviewer:ちなみに以前「井槌病院」で出産された方にもインタビューさせていただきました。
いまゆさん:読ませていただきました!他の記事も熱心に読ませていただいています。
interviewer:いまゆさんは、看護師さんなんですよね?
いまゆさん:そうです。看護学生時代に4年ほどウエディング業界でアルバイトとして働いていたのですが、その後看護師になりました。
interviewer:パートナーの方はお医者さんなんですよね?
いまゆさん:そうです。ちなみに私の両親も同じ組み合わせなんです。
interviewer:お母様が看護師さんで、お父様がお医者さんということですか?
いまゆさん:そうなんです。
interviewer:いまゆさんは、何科の看護師さんだったのですか?
いまゆさん:小児科でした。中学生~未熟児や保育器管理が必要なお子さんのケアなどをしていました。
interviewer:小児科を選んだ理由を教えてもらえますか?
いまゆさん:大学の実習がきっかけで周産期に携わりたいと思ったのが最初ですね。もともと学生だった時から「“父親の役割”ってなんだろう?」というのが疑問だったんですよね。
interviewer:“父親の役割”???
いまゆさん:実習中、産まれたての赤ちゃんと母子分離で入院されているお母さんにも関わらせていただく機会が何度かありました。赤ちゃんとタッチングなどで愛着形成がすすむ母子の姿を見て、お父さんとの関わりが少ないなと感じました。
interviewer:忙しい人も多いでしょうから、そうなりがちかもしれないですね。
いまゆさん:もちろん仕事が忙しいというのもわかりますし、そのことを非難する気持ちはありません。ただ「父親ってどうやって、自分の赤ちゃんを認識するんだろう?」という疑問が生まれました。
interviewer:なるほど!「生物学的に人間の父親が、どのように自分の子どもを認識するのか?」ということですね。たしかに女性は実際に赤ちゃんを産むので認識できると思いますが、男性は特にそういったことはないですもんね。
いまゆさん:そうなんです。そこでいろんな生き物の父親の役割を調べてみました。
interviewer:めちゃくちゃ気になります!
いまゆさん:色々と調べた結果、父親の役割をきちんとやっている生き物ってゴリラだけみたいなんですよ。
interviewer:ゴリラだけ(爆)!
いまゆさん:詳しい説明は割愛しますが、ゴリラはすごいイクメンみたいですよ。
interviewer:たしかに「ゴリラ 雄 子育て」で検索すると、それっぽい記事がけっこう出てきますね。
いまゆさん:赤ちゃんが親を信頼するステップは、母親の場合「赤ちゃん → 母親」とダイレクトに信頼してくれるのですが、父親の場合「赤ちゃん → 母親 → 父親」というステップで信頼するみたいです。
interviewer:父親は赤ちゃんから二次的に信頼されるんですね。
いまゆさん:そうみたいです。「母親が信頼している人だから、この人(父親)を信頼しよう」という順番みたいです。
interviewer:生き物ってすごいなぁ。でも、なんかすごく納得できる話ですね。
いまゆさん:父親側も、赤ちゃんからそうやって信頼されることで「自分の守るべきもの」という認識が生まれるそうです。
interviewer:無痛分娩の話を聞く前に、すごく面白い話を聞けました!ちなみにちょっと検索してみたらウィキペディアにも「父親の役割」というページがありますね。こちらはあくまで人間の父親の役割について書かれていますが、これも興味深い内容が載っていますね。
私の周りでは賛否両論あった無痛分娩
interviewer:無痛分娩を知ったきっかけを教えてください。
いまゆさん:小児科の看護師として働いていた時に知りました。総合病院だったので小児科も産科もありまして、その2部門は関わりを持つことが多かったんです。
interviewer:なるほど。想像つきますね。
いまゆさん:産科の先生と話す機会もあり、色々と話すうちに無痛分娩について知るようになりました。そして「無痛分娩もいいよね」と仰る先生が多い印象でした。
interviewer:産科の先生がそう言われると、いまゆさんも無痛分娩に対して良い印象を抱いていたんですね?
いまゆさん:そうでもなくて、、小児科からは無痛分娩への見解は賛否両論だったんですね。出産は母児ともに命がけ、色々なリスクも考えられる中で、単純に赤ちゃんへのリスクで考えると、+αで麻酔を行うということになります。無痛分娩は吸引分娩のリスクが増えたり、遷延分娩などについてそう思われる意見も納得します。
interviewer:産科と小児科の先生で、無痛分娩への評価が分かれていたんですね!
いまゆさん:あくまで私の周りの意見ですが、その影響もあり私も最初は、あまり良くないものという認識でした。
interviewer:あまり良い印象を抱いていなかったいまゆさんが無痛分娩を良いものと思えるようになったのは、どういった理由なのですか?
いまゆさん:小児科と産科は身近なので、妊婦さんやお産のシーンも割と身近だったんです。実際に陣痛~出産を傍でみさせていただく機会もあり、何十時間も絶叫されたり壮絶な痛みに苦しむ姿を実際に目の当たりにし、出産に対して恐怖心が芽生えました。「私だったらこんなに耐えられない」と。
interviewer:それは確かに恐怖心が芽生えますね。
いまゆさん:そして「あの壮絶さを取り除けるなら、無痛分娩って良いものなんじゃないか」と思うようになりました。
interviewer:なるほど。1人目の出産が壮絶だったから、2人目を産むのを諦める人がいるというのも聞いたことがあります。
いまゆさん:このようにして無痛分娩へのイメージが変わってきたので、仲の良い産科の先生に「ぶっちゃけ無痛分娩ってどうですか?」って聞きに行きました。そうすると先生は「めちゃくちゃ良いと思うよ」と言っていましたね。それから、私自身も色々とリサーチしました。
interviewer:その辺りから、ご自身も出産することになったら無痛分娩にしようと思うようになったのですね。
いまゆさん:そうですね。あと私の周りに「無痛分娩で産んでよかった」という友人が結構いたので、その環境も私を後押ししてくれました。
interviewer:先ほど福岡市だと「井槌病院」「福岡山王病院」「東野産婦人科」が有名とお聞きしたのですが、いまゆさんがこの3病院の中で「井槌病院」を選んだ理由を教えてください。
いまゆさん:私が働いている病院の医師たちと先輩ママさんからの評価が高かったのが決め手ですね
interviewer:たしかに、それは信頼のおける評価ですね。
いまゆさん:だから、自分も出産することになったら「井槌病院」がいいなと思ってました。
interviewer:やっぱり妊娠前から無痛分娩のことや、評価の高い病院について知っていると、実際に妊娠した時もゆとりがありますか?
いまゆさん:これは大きいと思います。妊娠って体調の変化で気づくことも多いので、妊娠がわかった時には、もう体調が悪くなっていることも考えられるじゃないですか。そうなると、そこから病院を探したり、どんな出産スタイルがあるのかを調べたりするのって、すごく大変だと思うんですよ。会社等で働いている方の場合は、職場にも報告や引き継ぎなどしなければいけなかったりもするだろうし。
interviewer:昔のドラマや映画なんかだと「つわり」で自分の妊娠に気づくというシーンって多かったですよね。たしかに考えてみると妊娠って、体調に異変があるから気づく人も多いはずですよね。
いまゆさん:そうなんです。だから事前にある程度で良いので病院や出産スタイルについて知見があると、それだけでかなりゆとりをもって色々と選べると思います。
interviewer:無痛分娩を選ぶことについて、夫さんからは何か言われましたか?
いまゆさん:夫が医師をやっていまして、硬膜外麻酔への安全性は理解していますので、そこは問題ありませんでした。また、硬膜外麻酔は背中に麻酔を打つというのが怖かったのですが、夫が色々と説明してくれたので、だいぶ恐怖は和らぎました。
interviewer:ご両親には無痛分娩をすることを伝えましたか?
いまゆさん:伝えました!無痛で全然OKという感じでしたね。「いいなぁ」って言ってました(笑)。というのも、母も出産の時にすごく大変みたいだったそうですし、母の知り合いの方で迷走神経反射を起こした方もいたらしく、そういう壮絶なケースの出産も知っているので、無痛分娩に対して抵抗はないみたいでした。父は医者をやってるだけあって、麻酔の安全性も知っているから「いいじゃん」という感じでした。色々な病院の情報を知っているので「どこの病院で産むのか?」の方を気にしていましたね。
interviewer:迷走神経反射(めいそうしんけいはんしゃ)ってなんですか?
いまゆさん:かんたんに言うと、激痛で失神してしまうことですね。
interviewer:気絶しちゃうこともあるんですね。
いまゆさん:私の周りの方からも、自然分娩した方で失神しかけたという話はけっこう耳にしますね。自然分娩で壮絶な出産を経験した友人の中には「もう出産したくない」と言っている人も何人かいます。
interviewer:私もそういう意見を耳にしたことがあります。つらすぎる出産ならそう思っちゃいますよね。
いまゆさん:私は無痛分娩で幸せなお産だったので「無痛分娩をさせてくれるならいつでも産める」と思います。経済的に問題なければ全然産みますって感じですね(笑)。
interviewer:周りのご友人には無痛分娩で出産されたことは話されましたか?
いまゆさん:めちゃくちゃ話してますね。
interviewer:どんなリアクションが多いですか?
いまゆさん:「いいなぁ」って言われることが多かったですね。あとは「羨ましいけど、費用がネック」と言っている子も多かったです。
interviewer:コミュニティによっては肩身の狭い想いをすることもあるみたいなんですが、いまゆさんの周りでは無痛分娩に対してネガティブなことを言ってくる人はいなかったんですね。
いまゆさん:そうですね。あとよく無痛分娩だけ「リスクが、リスクが」って言われがちですけど、別に自然分娩もノーリスクなわけではないですからね。先ほど話に出た迷走神経反射(めいそうしんけいはんしゃ)もそうですけど、痛みがあることによって発生するリスクもあります。
interviewer:たしかに!そう考えると、無痛分娩を選ぶことで減らせるリスクもあるってことですもんね。
無痛分娩当日。私の「反り腰」が原因で麻酔の針が抜け、激痛!
interviewer:無痛分娩の当日のお話を聞かせてください。
いまゆさん:無痛分娩って、予め日程を決めて出産する計画無痛分娩と、自然に陣痛が来るのを待って出産する無痛分娩があるんですけど、私の場合は後者でした。
interviewer:出産時期が2022年3月とのことなので、コロナが猛威を振るっている時期だったのではないですか?
いまゆさん:そうなんです。もしコロナ禍ではない世の中で計画無痛分娩を選べば夫もスケジュールを合わせて立ち会えたと思うんですけど、どうせコロナで立ち会いができないことはわかっていたので、自然に陣痛を待つ方を選びました。
interviewer:なるほど。
いまゆさん:無痛分娩の当日はお昼頃に陣痛がきました。ただ、そこまで陣痛が強くなくて、思ったよりも耐えられたんですよね。ちょっとお腹が痛い時くらいの痛みでした。夫は仕事に行っていて不在だったため、自分で病院に電話をかけました。「あまり痛くないんですけど、これ陣痛ですかね?」って。そしたら「間欠的な違和感も陣痛の可能性があるから、病院に来てください」と言われて病院に向かいました。
interviewer:ご自宅から病院まではどれくらいの距離なんですか?
いまゆさん:だいたい車で30分程度です。街の中心部の方にしか無痛分娩ができる病院がないので、ちょっと遠いんですよね。
interviewer:遠いけど陣痛の痛みがそこまで強くなかったから、割と耐えられたと?
いまゆさん:そうです。到着してNSTというモニターで診てもらったらやっぱり陣痛でした。その時助産師さんも「あなた割と平気そうだけど、無痛分娩やめとく?」的なことも聞かれて(笑)。
interviewer:第三者が見てもわかるぐらい、陣痛がそこまで痛くなかったんですね(笑)。
いまゆさん:そうなんです。でも「痛みゼロがいいです」って言って、夕方頃に麻酔を入れてもらいました。麻酔を入れてからは本当に痛みがゼロになりましたね。
interviewer:その後の流れを教えてください。
いまゆさん:麻酔を打ってからは、ふつうに夜ごはんを食べました。たしか筑前煮でした。その間に家族や友人に「入院になったよ」って電話してました。
interviewer:ゆとりがありますね(笑)。
いまゆさん:家族や友人からも「余裕すぎるね」と言われました(笑)。
interviewer:その後はどうだったんですか?
いまゆさん:私の場合、陣痛は来たけど、子宮口がぜんぜん開かなかったんですよ。だから麻酔で痛みをコントロールしながら、子宮口が開くのを待ちましょうということになりました。特にやることもなかったので19〜22時くらいまで寝てましたね。これでだいぶ体力温存できたなと思ってたのですが、いきなり麻酔の針が抜けちゃったんです。
interviewer:それは大変!
いまゆさん:このケースはよくあるパターンというわけではなくて、私がちょっと特殊だったのが原因なんですけど・・・。
interviewer:特殊?原因は何だったんですか?
いまゆさん:私は小さい頃からクラシックバレエを習っていまして、クラシックバレエをやっている人って反り腰になる人が多いんですよ。私も例に漏れず反り腰で、妊娠によってヘルニア気味になりました。
interviewer:クラシックバレエが反り腰になりやすいっていうのは、他の経験者の方からも聞いたことがあります。
いまゆさん:だから腰椎が狭くなっちゃっていて、その関係で普通の人に比べて麻酔の針を入れることがそもそも難しかったみたいです。
interviewer:途中で麻酔の針が抜けるとどうなるんですか?
いまゆさん:自然分娩だったら段階的に陣痛の痛みが強くなっていくのですが、途中で麻酔が抜けた場合は何の前触れもなく、いきなり最大級の痛みが襲ってきます。
interviewer:それはつらそう。
いまゆさん:それはそれは痛かったです。思わずナースコールを連打しましたね。私も悲鳴をあげていたので、助産師さんが慌てて駆けつけてくれて、再度麻酔を打つことになりました。
interviewer:痛みがMAXの状態で。
いまゆさん:はい。硬膜外麻酔を打つ時って、エビみたいに背中を折り曲げて、可能な限り動かないようにしなければならないのですが、激痛の中動けないのはめちゃくちゃ大変でした。助産師さんたち3人ぐらいに抑えてもらって、なんとか再度麻酔を打ってもらいました。
interviewer:麻酔を打ってからはどうでした?
いまゆさん:痛みがゼロになりました。なんと言うか、痛みが0の状態からいきなり10の痛みが来て、また0に戻ったみたいな感じでしたね。
interviewer:その後はどうだったんですか?
いまゆさん:2度目の麻酔が終わったのが深夜0時くらいだったんですけど、落ち着いたのでまた寝ましたね(笑)。この時もまだ子宮口がぜんぜん開いていなくて、助産師さんの見立てでは子宮口がちゃんと開くのは朝8時くらいとのことだったので。
interviewer:朝まで寝たんですか?
いまゆさん:だいたい夜の1時から3時半くらいまでウトウトした感じですね。子宮口が開くまでってガッツリ寝てしまうと良くないらしいんですよ。
interviewer:合間合間で寝られるってすごいメリットですよね。麻酔がなかったらずっと痛みと戦っていたのでしょうし。
いまゆさん:合間の睡眠で体力温存できたのは大きかったと思います。
interviewer:朝方の3時半頃に起きた後は何をしていたんですか?
いまゆさん:私が寝ている間にも、助産師さんがちょいちょい私の様子を見に来てくれていたんですが、朝4時くらいに助産師さんがたくさん入ってきました。
interviewer:動きがあったんですね。
いまゆさん:私は気づかなかったんですけど、どうやら破水したらしくて。そこから一気に「産んじゃいましょう」ということになりました。
interviewer:急展開!
いまゆさん:「まずイキむ練習しましょうか」と言われて、試しにイキんでみたんですが、1発目で割と赤ちゃんが出てきちゃって。
interviewer:すごい!
いまゆさん:頭が出てきてるのが見えて「赤ちゃん、髪の毛がフサフサだ!」と思ったのを覚えています。生まれる瞬間を夫と共有したかったので電話をかけたのですが、朝方なので夫は起きてきませんでした。
interviewer:じゃあ夫さんは間に合わなかったんですか?
いまゆさん:私も「どうしよう間に合わない」と思ってたんですが、途中で赤ちゃんが引っかかっちゃったんです。その処置に手間取っている間に夫とは電話がつながりました。
interviewer:おぉー!
いまゆさん:そこからは数回イキんだだけで、赤ちゃんが無事に出てきました。
interviewer:ほとんどスムーズに産まれたんですね。イキむのが上手かったんですかね。
いまゆさん:クラシックバレエでインナーマッスルが鍛えられていたのも良かったのかもしません。
interviewer:クラシックバレエのおかげで、反り腰にはなっちゃったけど、インナーマッスルと柔軟性は鍛えられていたんでしょうね。
いまゆさん:そうですね、何かしらプラスになっていると思います。マタニティヨガもそうですけど、やっぱり柔軟性やインナーマッスルを鍛えておくと、お産のスムーズさが違うかもしれません。
後編に続きます