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2024.09.24
体験談

大阪府かおりさん アメリカで無痛分娩、日本で計画自然分娩を経験

1人目はアメリカで「無痛分娩」、2人目は日本で「計画自然分娩」でお産をされ「どちらも良かった」と語るかおりさんの無痛分娩体験談です。学生時代に教育支援で発展途上国を訪れたり、1人でアメリカを横断した経験をお持ちとのこと。かおりさんが感じた「日本と世界のお産の捉え方の違い」についてもお話を伺いました。

【基本data】

■name/かおりさん

■年齢/39

■お住まいのエリア/大阪府豊中市

■家族構成/夫+妻+子ども(2人)

■出産施設/Hackensack University Hospital

■無痛分娩回数/1回

■無痛分娩費用/約30万円

■無痛分娩実施時期/2018年7月

取材時期:2024年2月

陣痛中にテレビでサッカー観戦を楽しむ私を見て母は驚いていました(笑)。

かおりさん提供写真

interviewer:本日はよろしくお願いします。

かおりさん:よろしくお願いします。

interviewer:簡単にかおりさんの自己紹介をお願いいたします。

かおりさん:出身は群馬県です。横浜の大学へ進学し、その後東京に本社がある会社に入社しました。絵が好きだったので、会社に勤めながら夜間にグラフィックデザインの専門学校へ通っていました。

interviewer:お仕事をしながら専門学校にも通うとはパワフルですね!アメリカへ行かれたきっかけは何ですか?

かおりさん:会社を退職した際に、1ヶ月かけてアメリカを横断したのがきっかけです。アムトラックという長距離列車に乗って移動していたのですが、その時に同じ列車に乗っている人の似顔絵を描いたら、アメリカ人は「お金を払う」と言ってくれるんですよね。日本ではあまりない感覚だなと思いました。

interviewer:アメリカは「チップ」の文化があるのでそれも関係があるのかもしれませんね。

かおりさん:そうですね。サービスに対して対価を払うのが当たり前という感覚です。その体験がとても嬉しくて「アメリカは絵描きにとって、とても良い国だな」と思ったんです(笑)。アメリカはインテリアにもお金をかける文化があるのでアートが身近な存在なんですね。

interviewer:確かに。

かおりさん:渡米するためにビザが必要だったので、まずは現地の会社に就職して働き始めました。

interviewer:「無痛分娩」を選んだ理由を教えてください。

かおりさん:アメリカは「無痛分娩」が主流で、自然分娩はむしろ珍しいものなので、私も当たり前に「無痛分娩」となりました。日本と違ってアメリカでは産後すぐに退院しないといけないので、心身のダメージを最小限にするためにも「無痛分娩じゃないと大変だよ」と周りから聞いていたこともあり「無痛分娩」一択でしたね。

interviewer:不安なことはありませんでしたか?

かおりさん:そういえば、担当の先生を妊娠途中で変更しました。最初の先生とは相性が合わず、そのままそこでお産をするのが少し不安になったんです。そして知人の紹介で新しい先生に変更してからは安心してお産に備えることができました。

interviewer:アメリカのシステムをあまり知らないのですが、先生を変えると病院も変わるということですか?

かおりさん:そのとおりです。先生が提携している病院で産みます。ちなみに健診は「オフィス」と呼ばれる診療所のようなところで行います。

interviewer:産気づいたら先生が病院に駆けつけてくれる感じでしょうか?

かおりさん:陣痛が来たタイミングでオフィスに電話をして「陣痛が10分感覚になったら病院に行くように」と事務の方から指示をいただきました。先生は最初の方に1度様子を見に来てくれたのと、産む直前にまた来て、赤ちゃんを取り上げてくれました。先生がいない間は、病院にいる看護師や麻酔科医が担当します。

interviewer:自然陣痛を待ってからの「無痛分娩」だったのですね。アメリカではそれが主流なのですか?

かおりさん:そうですね。自然陣痛を待ってからの「無痛分娩」が主流だと思います。

かおりさん提供写真

interviewer:そうなんですね!陣痛は何時ごろに来ましたか?

かおりさん:夜中の2時に陣痛が来て、病院に移動したのが4時頃です。赤ちゃんが産まれたのは22時でした。

interviewer:Hackensack University Hospitalでお産をされたとのことですが、出産費用はどれぐらいかかりましたか?

かおりさん:お産にかかる費用は加入している保険によって変わるのですが、私の場合は自己負担が約30万円でした。

interviewer:金額についてどのように感じましたか?

かおりさん:アメリカで医療機関にかかる際は、保険に加入していないととても高額になるので、「むしろこのくらいで済んでよかった」とも思いました。

麻酔が効きすぎてお産の実感がすぐには湧きませんでした。

かおりさん提供写真

interviewer:どのように先生を選びましたか?

かおりさん:お会いしてみて、穏やかで人柄が良い方だったのでお願いすることに決めました。この人なら信頼できると思えたのが大きいですね。ちなみに帝王切開の腕がいいことで有名な韓国人の先生で、わざわざ韓国からお産のために来る妊婦さんもいるほどでした。実は上の子を産んだ後に稽留(けいりゅう)流産を経験したのですが、その際も多くを語らず「きっと次があるよ」という感じで肩をギュッとしてくれて、とても優しい先生でしたね。

interviewer:とても素敵な先生ですね。病院は自宅からどれくらいの距離ですか?

かおりさん:健診を受ける「オフィス」までは車で約5分で、病院までは約15分です。

interviewer:近くて便利な距離ですね。「無痛分娩」についてパートナーやご両親はどのような反応をされましたか?

かおりさん:夫は、アメリカでは「無痛分娩」が当たり前ということもあり特別な反応はありませんでしたね。母も人の選択に口出しはしない人なので、自分の価値観を押し付けてくるようなことは全くありませんでした。

interviewer:素敵なお母様ですね。

かおりさん:母もお産に立ち会ってくれたのですが、陣痛中にも関わらず私があまりにも冷静だったのでその様子に驚いていました。母はちょうど私のお産の3ヶ月前に日本で妹のお産にも立ち会ったばかりだったんですね。妹は「自然分娩」だったので「無痛分娩」とのギャップに驚いたようです。

interviewer:お孫さんラッシュですね!どのような点に驚かれていましたか?

かおりさん:お産の日はちょうど楽しみにしていたサッカーのワールドカップのコロンビア戦だったんです。陣痛の痛みを全く感じさせず普通にサッカー観戦を楽しんでいる私を見て、母はすごく驚いていました(笑)。「ここからが頑張り時ね」という感じで身構えていたのに拍子抜けしたみたいです。

interviewer:麻酔の使用について、不安に思うことはありませんでしたか?

かおりさん:事故が起こる確率は0%ではないですが「自然分娩」だからといって絶対に安心というわけではないので、確率的にそこまで心配はしていませんでした。

病室内の付き添い者用ベッド/かおりさん提供写真

interviewer:お産当日はどのような心境でしたか?

かおりさん:麻酔が効いて痛みを全く感じなかったので、お産の実感が湧かず「本当に生まれるのかな?」という感じでした(笑)。看護師さんがモニターの波形を見ながら「今陣痛が来ていますね」とか「だいぶ強くなっていますね」とか「ちょっと弱くなってしまいましたね」などと陣痛の状態を教えてくれるのですが、私は何も感じないので「本当かな?」みたいな(笑)。

interviewer:自分のことなのに、半信半疑な感じですね(笑)。

かおりさん:ボタンを押せば自分で麻酔を追加できて「痛いと思ったら押してね」と言われたので、押していたら入れすぎたみたいなんです。看護師さんに「痛みに弱いのね」と言われて「え!そうなの?どれくらい我慢すれば良いのか具体的に教えて〜!」と思いました(笑)。

interviewer:初めてのことですし、痛みの感じ方は人それぞれなので難しいですね。

かおりさん:痛みについて細かなニュアンスを英語で正確に伝えられず、生まれる直前に「結構痛いかもしれません」というようなことを言ったら「そんなに痛いのか!」となってしまって、強めの麻酔を追加したんです。そしたら足の感覚が完全になくなって、動かせなくなるくらい麻酔が効いてしまったんですね。

interviewer:「プラ〜ン」状態ですね。

かおりさん:そう。手で持って自分の脚を動かしてみたのですが、脚がこんなに重いとは知りませんでした。

interviewer:お産の感覚は感じましたか?

かおりさん:何も感じませんでした。破水にも気づかなかったです。先生が他のお産で遅れるとのことで30分ほど待機していましたが、疲れていたので眠っていました。ただ、もしかしたら(お腹の中の)息子は苦しかったかもしれないですね。

interviewer:自然分娩では「待て」と言われてもそんな風には待てないですね(笑)。待っている間も看護師さんの付き添いはありましたか?

かおりさん:常にモニターで赤ちゃんの状態を見てくれていました。

interviewer:麻酔が切れた後の痛みはどうでしたか?

かおりさん:やはり痛かったですね。子宮が収縮する痛みが辛かったです。飲み薬を服用しました。

interviewer:お産直後の心境を教えてください。

かおりさん:産む瞬間は感動というよりも怖さがありました。「本当に今生まれるの?私、お母さんになるの?」という怖さです。麻酔が効いていて身体的な感覚がないので、お産の実感が持ちづらかったんですね。さっきまで普通にテレビを見ていたのに、急に赤ちゃんがやってくるという不思議な感じでした。

かおりさん提供写真

interviewer:産まれた赤ちゃんと対面してみてどのように感じましたか?

かおりさん:産まれてすぐ看護師さんが赤ちゃんの身体を拭いてくれたり、身長測定などをしてくれてから抱っこさせてくれました。陣痛の痛みがあればアドレナリンが出て興奮していたのかもしれませんが、すごく冷静でしたね。「本当に産まれた〜!びっくり!」という感じで(笑)。

interviewer:さっきまで普通にテレビを見ていたのに(笑)。

かおりさん:生まれた瞬間は「この子を本当に産んだのかぁ」という驚きが大きくて、疲れもあり、不思議なテンションでした。翌朝、看護師さんに連れられて病室にやってきた我が子を見た時は、それはそれは可愛かったですね〜!ちなみに初日の夜は母子別室でした。

interviewer:お産の実感が湧いてきたんですね!

入院中の食事/かおりさん提供写真
入院中の食事/かおりさん提供写真

かおりさん:その時、愛おしさが爆発しました!

interviewer:「無痛分娩」の後の疲れや体力消耗はどんな感じでしたか?

かおりさん:もちろん疲れはありましたが「無痛分娩」のおかげで体力消耗は少なく済んだと思います。それが1番ありがたいと思ったことです。

interviewer:退院した後、産後の生活はスムーズに開始できましたか?

かおりさん:「歩けない」とか「ずっと横になっている」ということは全くなく元気で過ごすことができました。

interviewer:体力が通常に戻ったなと感じたのは、産後どれくらい経ってからでしたか?

かおりさん:育児で睡眠不足があったりするので「いつ」と断言するのは難しいですね。でも産後2ヶ月の頃には友人が日本から遊びに来ていました。

interviewer:えぇ!産後2ヶ月でお客様が!すごいですね。

かおりさん:その頃、在宅でデザインの仕事も再開していました。授乳をしながら働いていましたが、今思えばその頃は若くて体力もありますし割と元気だったと思います。

interviewer:産後の元気さが伝わってきます。かおりさんは「無痛分娩」をやってよかったと思いますか?それともやらなくてもよかったと思いますか?

かおりさん:絶対にやってよかったです!お産が「痛くて辛い思い出」ではなく「楽しかった思い出」として鮮明に記憶に残っています。「 あの日、陣痛中なのに病室でみんなでサッカー観戦したよね」とか「あの看護師さん面白かったよね」とか(笑)。そういう風にお産の日の思い出を語る余裕がありますね。子供に、生まれた時の様子を「おばあちゃんがびっくりしてたよ」と伝えることができて、お産の時に周りの様子を見る余裕を持てた事がすごく良かったと思います。

かおりさん提供写真

interviewer:「無痛分娩」のメリットですね。他にも「これは無痛分娩のメリットだな」と思うことがあれば教えてください。

かおりさん:先ほどもお話しましたが、お産での体力消耗が少なく済むことですね。その分産後の回復も早いと思います。これは大きなメリットだと思います。あとは、痛みがない分、お産が幸せな思い出となりやすく、第2子にも積極的になれるのではないかなと思います。

interviewer:「無痛分娩」のここがデメリットだなと思うことはありますか?

かおりさん:私の場合は感覚が全くなくなるくらい麻酔が効いていたので「産んだ」という実感を持ちづらかったのは後悔として残りました。

interviewer:「無痛分娩」を他の方にオススメしたいと思いますか?

かおりさん:したいと思います。お金のかかることなので何がなんでもオススメするということではなく「私は楽だったよ。こんな感じで面白かったよ」と自分の体験を発信することはしています。

2人目は日本で「計画自然分娩」でお産をしました。

かおりさん提供写真

interviewer:お2人目は日本で自然分娩だったとお伺いしています。自然分娩を選んだ理由は何ですか?

かおりさん:妊娠6ヶ月の時にアメリカから帰国して、実家のある群馬県でお産をしました。最初は「無痛分娩」を希望していたのですが、田舎なので「無痛分娩」ができる病院自体が少なくて既に予約がいっぱいだったんです。

interviewer:なるほど。妊娠6ヶ月での分娩予約は取れなかったんですね。

かおりさん:妊娠初期から受診に行かないと分娩予約は取れないらしいという情報は知っていたので、そこまでガッカリはしませんでした。

interviewer:そうなんですか!「無痛分娩」ができないことをすんなりと受け入れられた理由は何ですか?

かおりさん:初産と違って、今回は経産婦なのでそこまでお産に時間がかかることはないだろうと思ったからです。あとは、1人目の「無痛分娩」では痛みがなさすぎてお産の実感を持てなかったので次は自然分娩で産んでみたいという気持ちになりました。

かおりさん提供写真

interviewer:そういう理由だったのですね!お2人目を産んだ病院はどのような病院でしたか?

かおりさん:「計画自然分娩」しかやっていない病院です。お産の予定日を決めて、朝入院して促進剤を入れるという流れですね。先生のお話では「大体2〜3時間で産まれる方が多いです」とのことでしたので、お産を長引かせたくない私にとっては不安が少ないお産方法でした。

interviewer:お2人目は「計画自然分娩」だったのですね。実際には何時間くらいで産まれましたか?

かおりさん:朝の8時に病院へ行って、11時前に生まれました。

interviewer:早い!

かおりさん:実はその病院は、インターネットでの口コミ評価が悪くて人気のない病院だったんです(笑)。

interviewer:えぇ!?どうしてその病院を選んだのですか(笑)。

かおりさん:日本は「良い」と思ったことを口コミにわざわざ書く人が少ないように感じます。その病院の悪い口コミも件数はそんなに多くなかったし、お産とは関係のない内容だったので、実際に病院へ足を運んで先生のお話を聞いて「大丈夫そうだ」と判断しました。結果的に満足のいくお産ができて、良い病院を選んだと思います。

interviewer:どのような点が良かったですか?

かおりさん:コロナ禍だったのですが、その病院は1日に1人しか分娩予約を入れないので、立ち会いOKだったんです。人気も無いので入院中も貸し切り状態で、面会もOKとなり上の子も両親も面会に来てくれてワイワイできました。入院中も長男との関わりをちゃんと持ちたいと思っていたので、その点の満足度が非常に高かったですね。

interviewer:プライベート感たっぷりで良いですね。

かおりさん:2階を貸切状態にしてのお産でしたが、1階では普通に産婦人科の健診をしていたので私の叫び声が院内に響き渡っていました(笑)。

interviewer:おぉ!お2人目は陣痛で叫んだんですね!

かおりさん:叫びました!だんだんと声のキーが高くなっていくんです(笑)。

interviewer:痛みのレベルと共に(笑)。「無痛分娩」と「計画自然分娩」を経験されてどちらが良かったですか?

かおりさん:どちらも良かったです。私としては順番は完璧でした。1人目は時間はかかったけども麻酔のおかげで痛みのないお産を経験できました。2人目はその時の反省点を加味して「計画自然分娩」に挑みました。麻酔のない分娩ですが、経産婦でしかも「計画自然分娩」ということで時間がそこまでかからないことを前提としています。想定通り苦しむ時間も短く済んだので、お産で疲弊しすぎることもありませんでした。

interviewer:アメリカと日本のお産の違いについて何か感じたことはありましたか?

かおりさん:立ち会い出産の場合、日本だと頭側に立ちますよね。アメリカの場合はおまたの方に立ちます。

interviewer:それはちょっと、カルチャーショックです(笑)!

かおりさん:夫も母親もおまたの方にいて、写真撮影係の母親がお産の瞬間をバッチリ写真に収めてくれました(笑)。

interviewer:抵抗はありませんでしたか?

かおりさん:日本では陰部について隠す傾向があるかなと思います。排泄に関しても、アメリカのトイレのドアは上下の開口部がすごく広くて排泄の音もそこまで気にしません。

interviewer:へー!!

かおりさん:学生時代は国際学部だったのでミャンマーやベトナムでの教育支援に携わっていました。ミャンマーでは長距離バスのトイレ休憩の際にぼっとん便所に長蛇の列ができるんです。列に並んでいる最中に停電で真っ暗になってしまった時は、みんな「ラッキー」とばかりにその場でしゃがみ込んでおしっこを始めたんですよ(笑)。

interviewer:それは日本ではありえないですね!(笑)。

かおりさん:そうですよね。排泄に関する概念が日本と全く違うなと感じました。お産はまた少し違うかもしれませんが、そういったことをセンシティブに捉えるのは日本ならではかなと思います。

interviewer:最後に「無痛分娩PRESS」の読者のみなさまに一言メッセージをいただけますでしょうか。

かおりさん:「無痛分娩」のリスクを不安に思う方もいるかもしれませんが、どのようなスタイルの「お産」でもリスクはあると思います。「無痛分娩」の場合は医療従事者がつきっきりでモニターなどの目に見える形で状態を常に把握してくれている中でのお産になるので、そういう点はむしろ安心材料になるのではないかなと思います。

interviewer:本日は貴重な「無痛分娩」の体験談をお話いただき本当にありがとうございました。

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