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2025.04.23
出産や育児を応援するサービス・人々

無痛分娩と医療保険。費用が戻るのはこんなケース| 現役の保険プランナー 福田嘉典さん

『無痛分娩PRESS』が今回お話を伺ったのは、医療保険に精通し、第一子誕生をきっかけに「当事者目線」のアドバイスもできる保険プランナー・福田 嘉典(ふくだ よしのり)さん。意外と知られていない「出産時の医療保険」について、具体的な給付事例や申請のポイントなどを、保険のプロならではの視点でわかりやすく教えていただきました。

【福田嘉典さんProfile】

大手保険会社に勤務し、保険アドバイザーとして8年の経験を持つ。医療保険やがん保険、ライフプラン設計など幅広い相談に対応しており、わかりやすく丁寧な説明に定評がある。最近、自身も第一子が誕生し、出産や育児にまつわる保険について、よりリアルな視点からアドバイスできるようになったと語る。趣味は筋トレ・ランニング。現在はJリーグ・ジェフユナイテッド千葉の熱烈なサポーターとして、週末はスタジアムで声援を送るのがルーティン。

取材時期:2025年3月

出産で保険が下りるって本当?実は対象になるケースがある

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interviewer:本日はどうぞよろしくお願いします。保険に関していろいろとお話を伺えればと思います。

福田嘉典さん:よろしくお願いします。会社名は出せないんですが、保険について私が知っていることは全部お話ししますので、何でも聞いてください。

interviewer:ありがとうございます。今日は保険の中でも、妊娠や出産に関わる内容について詳しく伺えればと思っています。結構知らない方が多いようで、例えば吸引分娩だったのに申請していなかったというケースもあるそうですね。

福田嘉典さん:そうなんです。特に出産に関しては「普通分娩=保険対象外」という認識の方が多くて、吸引分娩や帝王切開のような“異常分娩”に該当するケースでも、申請していない方がすごく多いんですよ。

interviewer:えっ、それはもったいないですね。病院側からは案内があったりしないんですか?

福田嘉典さん:病院の方は、基本的には医療行為の専門家ですから、民間保険の給付の仕組みまでは詳しくないことが多いんです。なので「これ保険の対象になりますよ」とは、なかなか案内されないんですよね。

interviewer:たしかに、病院の方も民間保険まで詳しくはわからないですよね。

福田嘉典さん:はい。やっぱり、自分が契約している医療保険の担当者に聞くのが一番確実です。

interviewer:では、実際に保険が下りるケースとしてわかりやすいのはどういったものがありますか? 吸引分娩や帝王切開といった医療的な処置も、対象になるのでしょうか?

福田嘉典さん:はい、そうです。帝王切開はもちろん手術ですし、吸引や鉗子分娩も医療行為にあたるので、基本的には医療保険の給付対象になります。さらに「女性疾病特約」に加入していれば、基本の給付に加えてプラスで支払われるケースもあります。たとえば、入院1日につき追加で5,000円が支給されるといった内容ですね。

interviewer:特約がついていると、同じ入院でももらえる金額が変わってくるんですね。

福田嘉典さん:そうなんです。特に妊娠・出産に関連する場面では、女性疾病特約が役立つことが多いです。ただ、どの特約がどこまでカバーしているかは保険会社によって異なるので、確認はしておいた方がいいですね。

interviewer:では、もしかすると「知らないまま数万円損していた」という方も、結構いらっしゃるわけですね。

福田嘉典さん:本当にそうなんです。申請すれば数万円、ケースによっては十数万円戻ってくることもあるので、もったいないと思いますね。

不妊治療にも保険が使える?先進医療の実例と注意点

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interviewer:出産だけでなく、不妊治療に関しても保険が使えるケースがあると聞いたのですが、本当ですか?

福田嘉典さん:はい、本当です。最近は不妊治療に「先進医療」が使われるケースも多くて、実費の一部をカバーできる保険もあります。特に「タイムラプス法」や「採卵手術」などですね。

interviewer:「タイムラプス法」って、具体的にどんな治療なんでしょう?

福田嘉典さん:受精卵の分割の様子を継続的に撮影して、胚の発育状態を観察する技術です。これは先進医療に分類されているので、先進医療特約がついた保険に入っていれば、かかった費用の一部を受け取れることがあります。

interviewer:それはありがたいですね。金額としてはどのくらい戻ってくるものなんですか?

福田嘉典さん:保険の種類によって異なりますが、例えばタイムラプスの実費が1万2000円くらいだとすると、そのうちの20%、3000円前後が給付されるケースもあります。以前は交通費として5万円まで支給されていたこともあったんですが、現在はだいぶ縮小されていますね。

interviewer:先進医療って、全部が対象になるわけじゃないんですか?

福田嘉典さん:そうですね。加入した時期によって対象範囲が違っていたり、健康保険の適用になっているかどうかでも判断が変わるんです。例えば「以前は先進医療扱いだったけど、今は健康保険が使えるようになった」というケースもあります。

interviewer:なるほど…加入時期って、けっこう重要なんですね。

福田嘉典さん:はい。特に不妊治療に関しては、健康保険に適用されたのが比較的最近なので、それ以降に加入した保険であれば対象になる可能性が高いです。逆に、それ以前だと対象外ということもあります。

interviewer:採卵やその後の通院なんかも、保険対象になるんでしょうか?

福田嘉典さん:はい、通院特約がついていれば、通院した日ごとに一定額が出ることもあります。採卵手術自体も、外来手術として給付対象になる場合がありますね。

※先進医療・・・厚生労働大臣によって承認された、将来的に保険適用される可能性がある高度な医療技術のこと。現在は保険診療と併用できないため、治療にかかる費用は原則全額自己負担となるが、民間の医療保険に「先進医療特約」がついていれば、実費の一部または全額をカバーできることがある。

申請すればお金が戻るかも?見逃されがちな給付ケース

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interviewer:異常分娩が保険の対象になるというお話がありましたが、それ以外にも見逃されがちなケースってありますか?

福田嘉典さん:はい、実はかなり多いんです。例えば「妊娠高血圧症候群」や「妊娠糖尿病」「重度のつわり(妊娠悪阻)」で入院したケースも、保険給付の対象になる可能性があります。

interviewer:つわりで入院…それも保険が使えるんですね?

福田嘉典さん:はい。例えば、つわりが重くて点滴のために数日入院したような場合は、ちゃんと医療行為と見なされるので、医療保険から給付が受けられることがあります。

interviewer:それはまったく知らない方が多そうですね。他にはどんなケースがあるんでしょうか?

福田嘉典さん:流産や死産、子宮外妊娠で手術や入院を伴ったケースも保険の対象です。中には「妊娠の延長」と考えて申請しない方もいますが、医療行為として入院や手術をしていれば、対象になる場合がほとんどですね。

interviewer:妊娠に関わるトラブルって、医療保険の対象になるかどうか判断が難しそうですね。

福田嘉典さん:そうなんです。ひとつの目安になるのが「異常妊娠・異常分娩にあたるかどうか」という点です。自然な経過とは異なり、医師の判断で処置が行われた場合は、給付対象になることが多いです。

interviewer:ちなみに、妊娠が分かった後に保険に加入しても、そういったトラブルには対応してもらえないんですよね?

福田嘉典さん:はい、その点は要注意です。妊娠が判明した後に保険に入った場合、特別条件(特定疾病・部位不担保法)がついてその妊娠に関わる入院や手術は原則として給付対象外になります。多くの保険で1年間は出産・妊娠関連の給付ができないようになっているんです。

interviewer:なるほど…。だから「妊娠が分かってから保険に入る」のでは遅いということですね。

福田嘉典さん:はい。将来的に妊娠・出産を考えている方は、妊娠前に加入しておくことが、給付を受けられるかどうかを左右するポイントになります。

申請しないともらえない!“自己申告制”の壁と対策

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interviewer:これまでのお話を聞いていると「保険がおりるケース」って意外と多いんだなと驚いています。でも逆に言えば、申請しなければ全く受け取れないということですよね。

福田嘉典さん:その通りです。医療保険の多くは“自己申告制”なので、こちらから申請しない限り、保険会社から「これ保険の対象ですよ」とは教えてくれないんですよ。

interviewer:なるほど。「もしかして対象だった?」と後から気づくケースもありそうですね。

福田嘉典さん:ありますね。よくあるのは「2年前の出産で吸引分娩をしたけど、申請していなかった」というケース。でも、実はそれでも間に合うことがあるんです。

interviewer:えっ、それって出産から2年経ってからでも申請できるんですか?

福田嘉典さん:はい。基本的には保険金の時効は3年なんですが、一部の保険会社では事情によって5年程度まで受け付けているところもあります。

interviewer:それなら「もう遅いかも」と思っていた方でも、まだ間に合う可能性がありますね。

福田嘉典さん:そうなんです。例えば「保険が出るとは知らなかった」とか「出産直後でそれどころじゃなかった」といった理由があれば、柔軟に対応してくれることもあります。

interviewer:ちなみに、申請にはどんな書類が必要なんですか?

福田嘉典さん:一般的には診断書や診療明細書ですね。ただ、加入からの年数や内容によっては、診断書が不要なこともあります。たとえば私の家族の場合、加入から2年以上経っていたので、明細書の写真だけで申請できました。

interviewer:それは便利ですね!でも書類を失くしてしまった場合は…?

福田嘉典さん:その場合はちょっと難しいです。病院側に記録が残っていれば再発行してもらえることもありますが、難しい場合は申請ができないこともあります。ですので、出産に関する書類はなるべく保管しておいてほしいですね。

interviewer:たしかに、保険の対象かもしれないと思ったら、すぐ調べるのが大事ですね。

福田嘉典さん:はい。「ちょっとでも対象かも?」と思ったら、一度保険会社や担当者に相談してみることをオススメします。

ネット保険vs担当者付き保険。どっちがいいの?

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interviewer:近年はネットでも簡単に保険に入れるようになりましたけど、やっぱり担当者がついている保険とでは違いがあるんですか?

福田嘉典さん:かなり違いますね。ネット保険は便利な反面、すべて自己判断・自己責任になるので、告知ミスや書類不備によって給付されないケースが実は結構多いんです。

interviewer:え、そうなんですか? それって相当保険に精通していないと、素人ではほぼ無理ゲーですよね。

福田嘉典さん:例えば「過去5年以内に病気してませんか?」という質問に、何となく「大丈夫」と答えてしまうことがあるんです。でも、診断書を取ってみると「実は2年前に治療歴があった」ことがわかりダメになるケースもあります。

interviewer:なるほど。それで保険金が下りないこともあるんですね。

福田嘉典さん:はい。申告内容に虚偽があると見なされてしまうので、給付どころか、契約そのものが無効になる可能性もあります。ネット加入は、保険に詳しい人であれば良い選択肢ですが、そうでない場合はリスクも大きいです。

interviewer:一方で、担当者がついている保険は、どんなメリットがあるんでしょうか?

福田嘉典さん:わからないことをいつでも相談できるというのが一番大きいですね。申請書の書き方がわからなければ教えますし、書類の取り寄せが難しければ代理で動くこともあります。場合によっては、病院に診断書を取りに行くこともありますよ。

interviewer:そこまでしてくれるんですか!それは安心感ありますね。

福田嘉典さん:はい。よく「担当がついてると保険料高いんじゃないの?」と聞かれるんですが、実際は月額で1,000円も変わらないことが多いです。それでサポートがしっかりしているなら、むしろコスパは良いと思いますね。

interviewer:たしかに、何かあった時の対応を考えると、担当者の存在って大きいですね。

福田嘉典さん:そう思います。特に妊娠・出産のようにイレギュラーなケースが多い場面では、知識のある担当者がそばにいることが大きな安心につながりますね。

保険はいつ入るべき?担当者選びのポイントも解説

interviewer:ここまでのお話を聞いて、保険ってちゃんと入っておいた方がいいなと改めて感じました。では、実際いつ入るのがベストなんでしょうか?

福田嘉典さん:妊娠・出産に関して言えば、やっぱり妊娠がわかる前がベストですね。妊娠後は、多くの保険で「妊娠に関わる入院・手術は対象外」となる免責期間がありますから。

interviewer:なるほど。逆に「妊娠したから入ろう」は遅いわけですね。

福田嘉典さん:そうなんです。だから、将来的に妊娠・出産を考えているなら、早めに入っておいた方が安心です。個人的には、就職や結婚などライフステージが変わるタイミングがベストかなと思います。

interviewer:若いうちに入ると保険料も安いですしね。

福田嘉典さん:はい、年齢が上がると保険料も上がっていきます。特に女性の場合は、40代以降でがんや女性特有の病気のリスクも高くなるので、検査などで引っかかる前に入っておいた方がいいですね。

interviewer:ちなみに、担当者ってどう選べばいいんですか?これも素人だと何を基準に選べば良いのかわからないんですよね。

福田嘉典さん:そうですね。個人的には「保険業界で5年以上やっている人」をひとつの目安にするといいと思います。実はこの業界って、3年で9割が辞めるとも言われていて、長く続けている人はそれだけ信頼されている証拠でもあるんです。

interviewer:なるほど。経験年数がひとつの指標になるんですね。

福田嘉典さん:あとは「話しやすいかどうか」も大事です。信頼できる担当者がいれば、保険のことを自分で全部調べなくてもいいし、何かあったときにすぐ相談できる。専門家をひとりそばに置いておくような感覚ですね。

interviewer:確かに、安心感って大きいですね。では最後に、読者の方へメッセージがあればお願いします。

福田嘉典さん:はい。医療保険って、入っていれば必ず得をするわけではないかもしれませんが、「知らなかったせいで損をする」ことは防げます。少しでも「対象だったかも?」と思う方は、気軽に担当者やカスタマーに聞いてみてください。「やってみてダメだったらしょうがない」くらいの気持ちで、とりあえず申請してみることをおすすめします。

interviewer:たしかに、自分から動かないと受け取れないって話でしたもんね。でも「申請したら翌年から保険料が上がる」なんてことはないんでしょうか?

福田嘉典さん:それもよくある誤解なんですけど、医療保険は自動車保険と違って、何度使っても保険料が上がることはありません。給付を受けたからといって、来年の掛け金が上がることはないので、安心して申請してほしいです。

interviewer:そうなんですね!

福田嘉典さん:それからもうひとつ「たくさん請求すると担当者に悪いんじゃないか」と遠慮される方も多いんです。

interviewer:たしかに、それもちょっと気になるところではありますね。

福田嘉典さん:でもそれも大丈夫です。給付が多かったからといって、担当者の給料が下がったり、営業成績が悪くなるなんてことはありません。私もよく「何度も請求してすみません」と言われるんですが、逆に「申請してくれてよかった」と思っています。

interviewer:なるほど!保険って「使い方がよくわからない」という人が多いと思うんですが、実際はもっと気軽に相談していいものなんですね。

福田嘉典さん:まさにその通りです。保険は困ったときにこそ使うべきもの。だからこそ、遠慮せず、正当に受け取ってもらいたいなと思っています。

実は医療保険の給付対象になる、妊娠・出産に関する主なケース一覧

妊娠・出産にまつわる医療保険の給付について、この記事でご紹介した内容を以下に一覧でまとめました。実際に給付が受けられるかどうかは、ご加入中の保険の内容や時期、特約の有無などによって異なります。気になる方は、一度ご自身の保険証券を確認のうえ、保険会社または担当者に相談してみてください。

カテゴリー給付対象となる主なケース
異常分娩吸引分娩/鉗子分娩/帝王切開/早産(医療的介入あり)/双子など多胎妊娠/会陰切開の縫合が長引いた場合 etc…
妊娠中の合併症・異常妊娠妊娠高血圧症候群/妊娠糖尿病(検査入院含む)/重度のつわりで入院/切迫流産/切迫早産/子宮外妊娠(手術・入院あり) etc…
流産・死産関連自然流産/死産/稽留流産(手術・入院あり)etc…
不妊治療(先進医療特約あり)タイムラプス(胚培養)採卵/胚移植に伴う手術/通院先進医療技術料の一部給付外来手術も対象となる場合あり etc…

※この一覧は、妊娠・出産に関する医療保険の給付対象となる可能性がある主なケースをまとめたものです。実際の給付対象かどうかは、加入している保険の内容や加入時期によって異なりますので、詳細は保険会社または担当者にご確認ください。

▼ 注意すべき点
・妊娠がわかってから保険に加入した場合、その妊娠に関する給付は対象外になることが多い
・給付申請の時効は一般に3年、会社によっては5年まで認められる場合もある
・通常の経過での出産(自然分娩・無痛分娩など)は、医療行為ではないため原則として保険の給付対象外
・加入している保険内容・時期・特約によって給付の可否や金額が異なる

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