35歳 看護師 無痛分娩費用を安くする為にした事/鎌ヶ谷バースクリニック
無痛分娩とは?
麻酔を用いて、分娩(出産)時の痛みを取り除くお産のことです。実は無痛分娩の中でも、全く痛みを伴わない無痛分娩、少しの痛みを感じる無痛分娩など、様々な種類があるのですが、最も一般的な無痛分娩は「硬膜外鎮痛(こうまくがいちんつう)」あるいは「脊髄くも膜下鎮痛を併用した硬膜外鎮痛(CSEA)」という、下半身の痛みをとる麻酔を使用して、陣痛を軽減させるタイプのものです。
日本では近年になって「無痛分娩」というワードを耳にすることが増えましたが、世界で初めて無痛分娩が行われたのは100年以上も昔。1847年、スコットランドの産科医ジェームス・ヤング・シンプソン医師による麻酔を使った出産が、世界初の無痛分娩と記録されています。ここからヨーロッパ・アメリカを中心に麻酔を使った出産が広がっていき、紆余曲折を経て、進化を続けながら、現在のような母子共に安全で、痛みの少ない局所麻酔による無痛分娩が世界的に浸透していきました。
「痛みゼロ=ダメージゼロ」ではない。
これはよく誤解されがちですが、無痛分娩は痛みがないからといって母体へのダメージがゼロというわけではありません。男性にもわかりやすく例えると、親知らずの抜歯。親知らずを抜く時は、麻酔を使って歯を抜くので、施術時には痛みを感じなかったり、限りなく痛みが少なく済みます。しかし、痛みはなくても歯茎はしっかりとダメージを受けています。無痛分娩もこれと同じこと。無痛分娩は自然分娩に比べて出産ダメージからの回復が早いですが、それでも母体へのダメージはゼロではありません。ですので、出産した女性の周りにいる方々は、無痛分娩・自然分娩に関わらず、産後の母体のダメージをしっかりといたわるように心がけましょう。
世界の無痛分娩事情
ヨーロッパやアメリカ等の先進諸国では、無痛分娩はポピュラーな出産スタイルとして認知されています。ヨーロッパでは国によって無痛分娩の普及率は異なり、イタリア・ドイツ・ギリシャなど、割合が低い国もあります。それぞれ国によって出産に関する制度が違ったり、出産への考え方が異なるため、一括りにすることはできませんが、世界全体としては無痛分娩は増加傾向にあります。
アジアにおいてもシンガポールや韓国などでは、無痛分娩が一般的な出産スタイルとして普及してきています。
日本の硬膜外無痛分娩率は徐々に増加しています。帝王切開を含むすべての分娩に占める割合は、2007年の全国調査では2.6%でしたが(※1)、2016年には6.1%に増加しており(※2)、年間約5万人以上の妊婦さんが硬膜外無痛分娩を行なっていると概算されています。
アメリカとフランスは硬膜外無痛分娩を受ける妊婦さんが多い国として知られています。アメリカ全体では硬膜外分娩率は73.1%でしたが、州によって36.6~80.1%と幅がありました(※3)。興味深いことに、アメリカのミシガン州における日本人の硬膜外無痛分娩率は63.2%と報告されています(※4)。フランスでは1981年にはわずか4%だった硬膜外無痛分娩率は2016年には82.2%まで上昇しました(※5)。また、硬膜外無痛分娩の有無に関わらず、フランスで出産した妊婦さんの35.5%は薬を使わない産痛緩和法も行っていました。他にも、カナダ(57.8%)、イギリス(60%)、スウェーデン(66.1%)、フィンランド(89%)、ベルギー(68%)など北米やヨーロッパでは一般的に硬膜外無痛分娩が行われています(※6-※8)。一方、イタリア(20%)やドイツ(20-30%)、ギリシャ(20%)は比較的硬膜外無痛分娩率が低く(※9-※11)、欧米でも国により状況が大きく異なることが伺えます。
アジアは全体的に硬膜外無痛分娩率が低い地域ですが、イスラエル(60%)、中国(10%)、シンガポール(50%)、韓国(40%)と、やはり欧米同様、国によって違います(※12-※16)。しかしながら、アジアでは同じ国内でも地域によって医療資源の格差が大きいため、これらの数値が本当に各国の状況を表しているとは限りません。
※1. 照井克生.全国分娩取り扱い施設における麻酔科診療実態調査.厚生労働省科学研究補助金子ども家庭総合研究事業 2008.
※2. 公益社団法人日本産婦人科医会 医療安全部会.分娩に関する調査 2017.
※3. Butwick AJ, Bentley J, Wong CA, Snowden JM, Sun E, Guo N. United States state-level variation in the use of neuraxial analgesia during labor for pregnant women. JAMA Network Open 2018;1(8):e186567.
※4. Yoshioka T, Yeo S, Fetters MD. Experiences with epidural anesthesia of Japanese women who had childbirth in the United States. J Anesth 2012;26:326-33.
※5. Sante Publique France. Enquete nationale perinatale Synthese du rapport 2016.
※6. Public Health Agency of Canada. Labour and birth in Canada 2018.
※7. Monella LM. Women feel Italy's north-south divide with lack of access to epidurals. Euronews 2018.
※8. Lavand'homme P, Roelants F. Patient-controlled intravenous analgesia as an alternative to epidural analgesia during labor: questioning the use of the short-acting opioid remifentanil. Survey in the French part of Belgium (Wallonia and Brussels). Acta Anaesthesiol Belg 2009;60(2):75-82.
※9. Elissa Strauss. Italy is finally guaranteeing women access to epidurals during childbirth. SLATE 2016.
※10. Hunsicker A, Schmidt J, Birkholz T. Anasthesie in der Geburtshilfe. Eien Kurzubersicht. Klinikarzt. 2012;41:184-90.
※11. Staikou C, Makris A, Theodoraki K, et al. Current practice in obstetric anesthesia and analgesia in public hospitals of Greece: a 2016 national survey. Balkan Med J 2018;35:394-7.
※12. Shatalin D, Weiniger CF, Bachman I, et al. A 10-year update: national survey questionnaire of obstetric anesthesia units in Israel. Int J Obstet Anesth 2019, in press.
※13. Alice Yan. China to make epidurals more widely available. Inkstone 2018.
※14. Visruthan NK, Agarwal P, Sriram B, et al. Neonatal outcome of the late preterm infant (34 to 36 weeks): the Singapore story. Ann Acad Med Singapore 2015;44:235-43.
※15. Chan JJ, Gan YY, Dabas R, et al. Evaluation of association factors for labor episodic pain during epidural analgesia. J Pain Res 2019;12:679-87.
※16. URL: https://namu.wiki/w/출산 最終アクセス2019年3月19日
※出典:「一般社団法人 日本産科麻酔学会ホームページ」より:https://www.jsoap.com/general/painless/q19
日本の無痛分娩事情
日本における無痛分娩の割合は、全体のお産の中でも6.1%※。つまり新生児が100名いたら、たった6名だけが無痛分娩によって産まれているという計算になります。これは世界の水準と比べても、特別に低い割合です。日本で無痛分娩が普及しない背景には以下のような要因があると考えられます。
※2016年の数値です。
※出典:「一般社団法人 日本産科麻酔学会ホームページ」より
https://www.jsoap.com/general/painless/q19
「お腹を痛めて産むからこそ、子どもに愛情を持てる」という科学的根拠のない考え方。
これは特に高齢者世代に多い考え方として知られています。自然分娩が当たり前だった時代には、激しい陣痛に耐えざるを得ない女性を励ますための言葉だったのかもしれませんが、現在においては、お産の自由を認めない、女性を縛り付ける言葉になっているように感じます。実際にアメリカやヨーロッパにおいて無痛分娩で産まれた子どもは愛されていないのでしょうか?決してそんなことはないと断言します。お産の痛みと愛情に因果関係はありません。
「無痛分娩は危険性が高い」という根拠のないイメージ
インターネットの検索で「無痛分娩」と入力すると「無痛分娩 リスク」「無痛分娩 後遺症」などをはじめとするネガティブな検索候補ワードが出てきます。これを見ただけで不安に駆られる方も多いことでしょう。無痛分娩に関わらず、そもそも出産というものには、命に関わるリスクがあります。医療が発達した現代においても、年間の妊産婦死亡率はゼロではありません。ではなぜ無痛分娩だけここまで危険なイメージが付きまとうようになったのでしょうか。それは無痛分娩時におきた死亡事故をマスコミが過剰に報道したのが原因と言われています。しかし、実際に無痛分娩による出産のデータを見ていただければ「無痛分娩は危険」というのが根拠のないイメージであることが分かります。
出産後の入院期間が、欧米に比べて長い
自然分娩が当たり前だった日本では母体の健康を考慮して、産後の入院期間が長く設定されています。一方、欧米では医療体制の関係もあり、出産当日の退院や翌日の退院が一般的です。入院期間が短いからこそ出産によるダメージが少ない無痛分娩が普及しているという背景もあります。記憶に新しいのは、2018年イギリスのキャサリン妃の第3子の出産。彼女は出産後7時間で退院し、無事に自宅へと帰っていきました。
無痛分娩が可能な施設が少ない
自然分娩だけの施設と比べて、無痛分娩の施設をつくるためには麻酔科医や設備など、より多くの労力・コストや専門知識が必要となります。そのため、無痛分娩が可能な施設はまだまだ少ないというのが現状です。特に地方の場合は、無痛分娩ができる施設が限られており、さらに希望者が集中しすぎてしまうため、なかなか予約が取れないという状況も生まれています。「無痛分娩をしたかったけれど、予約が取れずに諦め、自然分娩を選んだ」という方も少なくないようです。
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