助産師_mikiさん 「2度、死にかけました」/愛育病院
助産師のmikiさん。東京都港区で「助産院こまち」という助産院を開業されています。お子さん2人の出産前後で「2度死にかけた」というショッキングな経験をされました。壮絶な経験だったにも関わらず「助産師として得たものが多かった」と語るmikiさんの無痛分娩体験談を伺いました。
【基本data】
■name/mikiさん
■年齢/36
■お住まいのエリア/東京都文京区
■家族構成/夫+妻+子ども(2人)
■出産施設/愛育病院
■無痛分娩回数/2回
■無痛分娩費用/約48万円(基本費用70万円+無痛分娩費用20万円−出産育児一時金-42万)
■無痛分娩実施時期/2019年6月、2021年12月
取材時期:2024年12月
お産の現場で麻酔の効果を見て「無痛分娩」のメリットを感じました。

interviewer:本日はどうぞよろしくお願いします。簡単にお仕事内容をお伺いしてもよろしいでしょうか?
mikiさん:助産師をしておりまして、現在「助産院こまち」という助産院を開業しています。出張産後ケアがメインの助産院です。
interviewer:開業されてどれくらい経ちますか?
mikiさん:約6年です。最近、ベビーシッターのサービスも始めました。
interviewer:mikiさんが「無痛分娩」を知ったきっかけを教えてください。
mikiさん:助産師学校で勉強しました。
interviewer:以前、看護師さんにインタビューさせていただいた際には「看護学校では無痛分娩を習わなかった」とおっしゃっていましたが、助産師学校では必須科目なのでしょうか?
mikiさん:看護学校では習わないのかもしれませんね。助産師学校は産科が専門なので習うのだと思います。
interviewer:なるほど。mikiさんはどちらの病院で「無痛分娩」をされましたか?
mikiさん:東京都港区にある「愛育病院」です。
interviewer:芸能人やセレブ御用達で有名なあの「愛育病院」ですね!有名人にバッタリ遭遇したりしましたか(笑)?
mikiさん:個室でしたので他の人に会う機会がほぼありませんでした(笑)。
interviewer:助産師という職業柄、既にいろいろと知識をお持ちだったと思いますが「無痛分娩」について情報収集をしましたか?
mikiさん:「無痛分娩」については特に調べませんでしたが、病院探しには力を入れましたね。
interviewer:そうなのですね。どのような条件で病院を選びましたか?
mikiさん:24時間「無痛分娩」に対応している病院にしました。
interviewer:理由を教えてください。
mikiさん:できるところまで「自然分娩」にして、痛みに耐えられなくなったら「無痛分娩」に切り替えられる病院がいいなと思っていたからです。
interviewer:なぜ選択肢として「無痛分娩」を用意したのですか?
mikiさん:助産師としてお産を介助する際に「痛みを和らげることができたら、余計な力が抜けてスルっと産めるのにな」と思うことが何度もあったからです。陣痛の痛みで叫んだり、力が入りすぎるとお産の進みが遅くなることがあるんですよね。
interviewer:はい。
mikiさん:そんな中で、麻酔で痛みが和らいだことでスムーズに進んだお産がありました。「こんなに違うんだ!」と思ったんです。私も痛みに弱いので、もしもの時に備えて「無痛分娩」に切り替えられる病院にしておこうと思いました。
interviewer:それは賢いですね。
mikiさん:他にも理由がありまして、24時間対応不可の病院の場合、37週~38週で入院の予定を組むことが多いんですね。
interviewer:「計画無痛分娩」と呼ばれるものですね。
mikiさん:そうです。予定日より早めの「計画無痛分娩」で、帝王切開になってるパターンを多く見ていたので「絶対にそれは避けたい」と思っていました。
interviewer:なぜ帝王切開になりがちなのだと思いますか?
mikiさん:37週以降は「正期産」と呼ばれ、赤ちゃんが十分に発育していると言われますが、陣痛促進剤を入れても、全く反応しないこともあります。子宮口が開かないんですね。赤ちゃん自身の準備はできていないわけなので、生まれてこなくても不思議ではありません。37週を過ぎたからといって、生まれないものは生まれないんですよね。それで帝王切開になってしまうという例が少なくないと思います。
mikiさん:確かに、言われてみると薬を使ったからといって、必ずしも陣痛が起こるわけではないですよね。
mikiさん:一度帝王切開をしてしまったら、大体次のお産も帝王切開になってしまいますので、最初のお産方法はとても重要です。私が友人に「無痛分娩」をおススメする時は「絶対に24時間麻酔科医がいる病院を選んだ方がいいよ」と言っています。
interviewer:的確なアドバイスですね!
mikiさん:中には、37週前半で「計画無痛分娩」をする病院もあると聞いたことがあります。もちろん、週数だけ見れば、産まれてきても問題のない週数です。しかし予定日近くに生まれた赤ちゃんと比較すると、まだ未熟ですよね。その病院では、分娩日を遅らせたい場合は追加料金が必要とのことでした。
interviewer:なんと!ちょっとビジネスライクですね。
mikiさん:そういった「早めの計画無痛分娩」は疑問が残ります。事前知識がなければリスクを感じませんよね。未熟な状態で小さく産まれた赤ちゃんは、おっぱいを上手く吸えなかったり、睡眠時間が長くなりがちで体重が増えづらかったりするんです。
interviewer:確かに、事前にそのようなリスクについての説明はない場合が多いのかもしれませんね。
mikiさん:私は自分の「無痛分娩」の経験から、自然に陣痛が来て痛みに耐えられなかったら麻酔を使用するスタイルがいいのではないかと思っています。
interviewer:人工的に出産日を決めるのではなく、赤ちゃんが成熟して自然に産まれてくるタイミングを待つということですね。
mikiさん:はい。
interviewer:「愛育病院」以外に候補はありましたか?
mikiさん:「愛育病院」が自宅から近かったこともあり、他の病院は考えませんでした。当時私が勤めていた病院の先生の後輩が「愛育病院」にいらっしゃったので、紹介していただきました。その先生は東大出身で、エコーがすごく上手で日本でもトップレベルの腕を持つ方です。信頼する先生の紹介ということで、迷いなく「愛育病院」を選びました。
interviewer:2人目も「愛育病院」にされたのですね。
mikiさん:1人目の出産で命を救っていただいたので、引っ越して病院から遠くなってしまったのですが再び「愛育病院」にしました。
interviewer:ええ!命が危なかったのですか!?
mikiさん:出産直後に大量出血をしたんです。1500mlくらいです。それでオペが必要になり、術後はMFICU(Maternal Fetal Intensive Care Unit)(妊娠から出産までになんらかのリスクを伴う妊産褥婦が入院する集中治療室(ICU))に3日間入っていました。そのような体験があり、2人目の時も「とにかく安全に出産したい」という気持ちから、医療体制が充実した「愛育病院」を再び選びました。
interviewer:そんなことがあったのですね。無事で何よりです。
mikiさん:本当にそう思います。
高いと思っていた無痛分娩費用。期待以上の効果で激安に感じました(笑)。

interviewer:出産費用はトータルで約48万円(基本費用70万円 + 麻酔費用 – 出産育児一時金-42万円)とのことですが「愛育病院」と言えば「産院御三家」の1つとして有名なこともあり、もっと高いイメージを持っていました。
mikiさん:一番安い個室を利用したからかもしれません。ただ、高いお部屋でも「産院御三家」の「聖路加国際病院」や「山王病院」と比べると安いと思います。
interviewer:そうなんですね。
mikiさん:当時、港区の出産育児一時金は42万円でしたが、今はもっと出るそうです。港区は子育て世代へのサービスが手厚いと感じます。
interviewer:補助が増えるのは嬉しいですよね。
mikiさん:そうですね。
interviewer:「無痛分娩」をすると伝えた際、ご両親やパートナーはどのような反応をされましたか?
mikiさん:両親には特に伝えていません。夫は、私が助産師ということで「どうぞ、全部決めてください」という感じで特に何も言いませんでした(笑)。
interviewer:確かに、お産のプロに対して言うことはないですよね(笑)。「無痛分娩」をする際に、不安や疑問はありましたか?
mikiさん:不安はありませんでした。無痛分娩費用については「ここで我慢すれば、代わりに20万円分好きなものを買えるのか・・・」と少し躊躇しました(笑)。
interviewer:安くはないですものね。実際にやってみて、価格に見合った価値は感じられましたか?
mikiさん:麻酔で陣痛の痛みから解放された時、20万円がすごく安く感じられました!もはや200円くらいの感覚でした(笑)。
interviewer:200円!(笑)。
mikiさん:「こんな風に痛みがなくなるなら、20万円くらい全然お支払いします!」という感じです(笑)。とても楽になりましたね。
interviewer:ここからはお産当日のお話を伺っていきたいと思います。
mikiさん:出産予定日に検診の予約を入れていました。朝10時頃の診察で、子宮口の開きは3cm、陣痛が12分間隔です。「このまま入院していいよ」と言われましたが「この程度の痛みでは、まだまだ生まれないと思うので一旦帰ります」と言って帰宅しました。
interviewer:自主帰宅!
mikiさん:はい。お昼ご飯に焼肉を食べたり、散歩をしたりしました。15時頃に陣痛の間隔が10分になったのですが「まだまだだな」と思ってお風呂に入りました。
interviewer:陣痛を促進するためですね。
mikiさん:そうです。夜になって陣痛の痛みが増してきました。赤ちゃんが降りてくる感覚はなかったので「多分まだ産まれてこないだろうな」と思いながらも、痛みに耐えられなくなり陣痛タクシーで病院に向かいました。
interviewer:陣痛タクシーは便利でしたか?
mikiさん:それが、運悪く経験の浅い運転手さんに当たってしまったんです。慣れていなかったんでしょうね。すごく慌てた様子で、道を間違えたりして散々でした。もう二度と陣痛タクシーは使いたくないです(笑)。
interviewer:大変な時に!それは運が悪かったですね。
mikiさん:病院に到着した時には、陣痛が始まってから約12時間経過していたのですが、子宮口がまだ4cmしか開いていませんでした。でもその時点で私は痛みに耐えられなくて叫んでいました(笑)。
interviewer:どこまで陣痛に耐えたのか気になります!
mikiさん:「もう1時間経っても変化がなかったら麻酔を使おう!」という気持ちでヒィヒィ言いながら痛みに耐えました。病院でも入浴をしましたが、子宮口の開きは変わらず(笑)。
interviewer:残念!
mikiさん:長時間の陣痛で疲れも限界に達していて、そこで心が折れました。「もういいです!麻酔を入れてください!」とお願いしました(笑)。麻酔を入れたのは、0時過ぎだったと思います。
interviewer:麻酔を入れた後の痛みはどうでしたか?
mikiさん:痛みがゼロになりました!麻酔のおかげで朝までぐっすり眠ることができましたね。
interviewer:おぉ~!
mikiさん:「これはすごい!みんななぜ無痛分娩をしないの!?」と思うほど楽になりました。
interviewer:20万円が200円に思える程、しっかり麻酔の効果を実感されたのですね(笑)。
mikiさん:はい。追加で100万円かかったとしても、払う価値があるとさえ思いました(笑)。
お産で大量出血。適切な処置で命を救っていただきました。

interviewer:麻酔のおかげで朝までぐっすり眠れたとのことでしたが、その後の流れを教えてください。
mikiさん:朝になり、陣痛促進剤の投入を開始しました。麻酔の効果で痛みをほぼ感じることなく夕方まで過ごしましたが、子宮口が8~9cmになると急に痛みが増して、また叫び始めました。でもすぐに麻酔を追加していただき落ち着きました。
interviewer:必要なタイミングで必要なだけ麻酔を追加する感じですね。

mikiさん:はい。そういえば、産む直前に何度も嘔吐したんです。「ガーグルベース」という専用容器があるのですが、それでキャッチした嘔吐物を15回くらい捨てた記憶があります。私が助産師として出産の現場にいた経験を振り返っても、ここまで嘔吐する人は見たことがなかったので「大丈夫かな?」と少し不安になってきました。
interviewer:15回もですか!?
mikiさん:お産が進んでくると嘔吐することはよくありますが、多くても3~4回です。頭は冷静で「嘔吐のしすぎで電解質バランスが崩れているのではないか」などと考えていました。知識があるからこそ不安でしたね。
interviewer:それは不安すぎます。大量出血で手術が必要になったとおっしゃっていましたが、何があったのでしょうか。
mikiさん:会陰切開をしたのですが、そこから更に裂けてしまい出血が止まりませんでした。「ヨードホルムガーゼ」というガーゼを使用しているのが見えたのですが、これは出血が本当に多い時にしか使わないものなんですね。それを見た時「あ、これはやばい状況だ」と思いましたね。ガーゼを詰めても詰めても、床まで血が垂れるくらいでした。
interviewer:わ~!
mikiさん:夫は「もう死んでしまうと思った」と言っていました。
interviewer:それはさぞ心配されたことでしょう。
mikiさん:この時も頭は冷静で、先生が「ヨードホルムガーゼでもダメだね」と言っていたのを覚えています。急きょ手術をすることになり「 輸血同意書」や「手術同意書」に夫がサインをしました。麻酔をかけてからは記憶がありません。
interviewer:急な展開に驚きです。裂けただけでそこまで大量に出血するのでしょうか?
mikiさん:術後に分かったのですが、膣壁血種(分娩時に下部腟壁の粘膜下組織の血管が破れ、骨盤下部に血液が浸潤してできる血腫)ができてしまっていたんですね。術後はNFICUに移動しました。
interviewer:かなり壮絶なお産でしたね。
mikiさん:そうなんです。
interviewer:やはり助産師さんということで、お産全体を通して、自分で自分を俯瞰して診察するような感じがあるのですね。
mikiさん:客観的に状況を観察している自分がいましたね。そういえば、2人目の時は自分で指を入れて内診をして「まだ4cmだから大丈夫」ということもやりました(笑)。
interviewer:セルフ診察!すごいですね。
mikiさん:はい(笑)。
interviewer:手術を終えて病室に戻ってからはどのように過ごされましたか?
mikiさん:ハイになってしまい眠れない状態で「休むよりも母乳をあげたい」という感じでした。
interviewer:そんな大変な中で、自分よりも母乳!すごいです。
mikiさん:「2~3時間おきの母乳は絶対にやりたい!」という気持ちがあったんですね。それから「助産師なんだし、母乳で育てなきゃ」というのもあったと思います。看護師さんがその想いを汲んでくださって、3時間おきに赤ちゃんを連れてきてくれたんです。全介助でおっぱいを吸わせてくれました。
interviewer:そうだったんですね。なんて優しい。
mikiさん:お忙しいのに、こちらの気持ちに応えてくださり「あぁ、プロだな」と思いました。
interviewer:手術はどれくらいかかりましたか?
mikiさん:1時間くらいで終わったと思います。
interviewer:1人目のお産で壮絶な体験をされましたが、2人目のお産の際には恐怖感はありましたか?
mikiさん:恐怖感はありませんでした。万が一何かがあっても「愛育病院」なら助けてもらえるという安心感がありましたね。
interviewer:病院への信頼が厚かったのですね。
mikiさん:そうですね。
interviewer:ご主人はどのタイミングで帰宅されましたか?
mikiさん:手術が終わった後に帰りました。
interviewer:麻酔はいつ頃切れましたか?
mikiさん:手術が終わった後も、背中から麻酔を入れたままでした。
interviewer:お産が終わっても麻酔を入れたままにするパターンは初めて聞きました。
mikiさん:私の場合は手術をしたので、イレギュラーなケースだと思います。
interviewer:いつまでその状態でしたか?
mikiさん:麻酔の針は1~2日くらいで抜いたと思います。夜トイレに行こうとしたら麻酔が効きすぎたのか、足が動かなくてナースコールをしました。その時はポータブルトイレで用を足しました。その後すぐに針を抜いたと思います。
2人目妊娠中にコロナに感染。

interviewer:2人目も「愛育病院」で「無痛分娩」をされたとのことですが、どのようなお産でしたか?
mikiさん:2人目はコロナ真っ只中の妊娠・出産でした。妊娠中にコロナに感染してしまって大変だったんです!
interviewer:なんということでしょう!
mikiさん:2021年の夏、ちょうど東京オリンピックが開催されている期間でした。妊娠7か月でコロナに感染して、夜中に呼吸が苦しくなって寝れなくなってしまったんです。
interviewer:入院されたのですか?
mikiさん:大きなお腹に肺が圧迫されてとても苦しくて、夫が救急車を呼んでくれました。救急車はすぐに来てくれましたが「ご存知の通り、この辺でコロナ患者を受け入れてくれる病院はありません」と救急隊員に言われてしまいました。
interviewer:そんな!でも確かに、当時はどこも病院が満杯で、搬送先がなくてたらい回しにされるという問題が報道されていましたよね。
mikiさん:「愛育病院で産む予定で、何かあったら連絡するようにと言われています」と伝えたら、救急隊員が病院に電話をかけてくれて受け入れてくれることになりました。
interviewer:よかった~!
mikiさん:入院先を見つけることが困難な中、無事に「愛育病院」が受け入れてくれて命を助けられました。本当に感謝しています。症状としては酸素吸入を必要とするレベルだったので軽症ではなかったと思います。
interviewer:「愛育病院」を選んでおいて良かったですね。
mikiさん:はい。入院中はコロナに感染しているということで隔離状態でした。看護師さんが部屋に何度も入ってこれないんですね。酸素の値が下がると、ナースコールがかかってきて「サーチュレーションが下がっています。酸素かいでくださーい!」と言われて、自分で酸素吸入をしていました。
interviewer:知識があってよかったですよね。素人だとかなり戸惑うと思います。
mikiさん:看護師(助産師)でよかったなと思いました(笑)。
interviewer:「愛育病院」に2度命を助けられたと言っても過言ではないですね。
mikiさん:本当に、そう思います。
一生忘れません。「これこそ本物の看護!」。

interviewer:「愛育病院」の良かったところを教えてください。
mikiさん:先ほどお話したとおり赤ちゃんを3時間おきに連れてきてくれて、母乳をあげさせてくれたのが嬉しかったですね。
interviewer:「プロだな」と思ったとおっしゃっていましたよね。
mikiさん:素晴らしい対応だと思いました。手術後すぐは「赤ちゃんは朝まで預かりますから、安静にしていてくださいね」という病院が多いと思います。中には特に説明もなく赤ちゃんを預かったままというところもあります。



interviewer:そうなのですね。施設やお料理はいかがでしたか?
mikiさん:施設はとても綺麗でした。ご飯は・・・美味しくなかったです(笑)。
interviewer:えっ!ウソっ!
mikiさん:普通の病院食という感じでしたね。私は量も少し物足りなく感じました。夫は「病院のご飯だけでは栄養が足りないんじゃないか」と心配して毎日お肉を差し入れしてくれていました(笑)。
interviewer:差し入れは自由なんですね。
mikiさん:はい。特に制約はありませんでした。
interviewer:「御三家」というからには、食事も豪華なイメージをしていたので意外な感想でした!
mikiさん:でも「食事」よりも「命」が大事じゃないですか(笑)。
interviewer:もちろんです。
mikiさん:ですので、私はあまり食事に期待はしていません。退院してから美味しいご飯を食べれば良いですからね。食事よりも「命を助けてくれる病院」という点においてどこよりも「愛育病院」を信頼しています。
interviewer:ありがとうございます。では次の質問です。お産を振り返って「こうしておけばよかったな」と思うことはありますか?
mikiさん:麻酔を入れるタイミングも良かったと思っていて、特に「こうしておけばよかった」ということはありません。ただ、思ったような分娩にはなりませんでしたね。
interviewer:壮絶でしたからね。
mikiさん:自分のお産を振り返った時に、ネガティブな感情しか持てず、しばらくは友人や家族に「麻酔を使った」と言えずにいました。
interviewer:そうなんですね。
mikiさん:1年くらいは言えずにいましたね。
interviewer:話せるようになったきっかけは何ですか?
mikiさん:ふと「なぜ隠してるんだろう」と思って、そこから言えるようになりました。今思えば産後うつだったのだと思います。私、入院期間中も「メンタルハイリスク」だったんです。
interviewer:「メンタルハイリスク」ですか?
mikiさん:はい。入院中、毎日声をあげて泣いていました。産後ってホルモンバランスが崩れますよね。
interviewer:産後はメンタルが不安定になるとよく聞きますね。
mikiさん:「愛育病院」では産後の1ヵ月検診は分院に行くことになっています。しかし、私はメンタルが不安定だったため本院で受けることになりました。
interviewer:ちなみにどういう理由で涙が出るのでしょうか?
mikiさん:本当に何気ないことなんです。「眠れない」と思ったら突然うわーって泣けてきたり。お産を思い出して泣くこともありました。赤ちゃんが可愛いくて大泣きしたりもしました(笑)。
interviewer:悲しいことだけが原因じゃないんですね。
mikiさん:患者さんには「助産師でもここまでメンタルが不安定になるのだから、我慢しないでありのまま、全てを出して大丈夫ですよ」とお伝えしています。
interviewer:ご自身がそんな風になると予想していましたか?
mikiさん:そこまでひどくなるとは思っていなくて、完全に想定外でした。
interviewer:それは辛かったですね。
mikiさん:眠れずにいたら、看護師さんが夜中に手作りのテルテル坊主にラベンダーの香りをつけて持ってきてくれたんです。それをもらって、また泣きました(笑)。
interviewer:癒されますね。
mikiさん:自分が看護される側になってみて、学んだことが本当にたくさんありました。今となっては「大変な思いをしてよかったな」と思います。
interviewer:そう思えるのがすごいです。
mikiさん:もしも何の苦労のないお産だったら今のようにママたちに共感できなかったかもしれません。自分が大変な思いをしたからこそ「うんうん、大変だよね」と心から共感することができます。
選ぶべき病院は「24時間麻酔科医がいるところ」

interviewer:退院後の体調はどうでしたか?
mikiさん:家に帰っても、お尻が痛すぎて座ることができませんでした!退院した翌日に病院に行って、抜糸してもらいました。
interviewer:縫った時の糸って、お願いしたらすぐに切ってくれるものなのですか?
mikiさん:切ってくれました。そしたら座れるようになったので「やっぱりこれが原因だった!」と思いましたね。私の場合は深く切れてしまっていて、肛門括約筋まで到達していたと思います。
interviewer:ひ~っ!痛そう!
mikiさん:「あ、お通じが出そう」って思ってトイレ行くと、間に合わない。という状態が1ヶ月ぐらい続きました。
interviewer:えーっ!
mikiさん:ずっと大き目のナプキンをつけていないと大変です。傷の深さによって1~4度に分類されるのですが私の場合は「3度裂傷」でした。大抵は1~2度で済むことが多いです。
interviewer:そうなんですね。
mikiさん:産後、膣から便が出てきたという人がいましたが、それはもう「4度裂傷」ですね。その方は再度入院して、縫う手術を受けていました。
interviewer:大きな傷を負われましたが、体が回復したなと感じるまでにどれくらいかかりましたか?
mikiさん:1人目も2人目も、産後3ヶ月ぐらいまでの記憶がないんですよね。慣れない育児に加えて、授乳があるので、連続して眠れるのは大体2時間~2時間半でしたから。大変だったんだろうなと思います。
interviewer:mikiさんが感じた「無痛分娩」のメリットについて教えてください。
mikiさん:痛みがゼロになるとは言いませんが「痛みが少ない」というのが一番のメリットですね。それから、体の負担が少ないと思います。私のように痛みに敏感な人は、恐怖から無駄に力が入ってしまって全身が痛くなるんですよね。麻酔を使うことでそういうことがないので、その分疲労がないのではないかと思います。
interviewer:mikiさんの場合は「無痛分娩」を選んで正解だったということですね。
mikiさん:そう思います。1人目の時は、すでに麻酔を入れていたのでスムーズにオペに移行できたのでそれは良かったなと思います。
interviewer:逆にデメリットだと感じるところを教えてください。
mikiさん:多少なりともリスクがあるということですね。それくらいです。
interviewer:最後に「無痛分娩」をしようか迷ってる方へメッセージをお願いします。
mikiさん:「無痛分娩」をしようか迷っているなら、絶対に「24時間麻酔科医がいる病院」を選んでおくべきです。人気のある病院は妊娠が分かってすぐに予約を取らないと間に合わないので、妊娠する前から考えておくと良いと思います。妊活中から病院選びをしておくことが、大事だと思います。
interviewer:そんなに早くからですか!
mikiさん:妊娠3ヶ月にはもう満席で締め切られてるような状態ですからね。「妊娠したから病院どこにしようかな」では遅いです。想像しづらいかもしれませんが、早くから考えておくことをおススメします!
interviewer:貴重な体験談に、素敵なメッセージ。本日は本当にありがとうございました!